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社会的または管理的圧力の下で行われる組織市民行動:論文レビュー

こんにちは、原田です。
今回は組織市民行動に関する論文です。

組織市民行動(OCB):
個人の裁量による行動であり、組織の正式な報酬制度に直接的または明示的に認識されるものではないが、集団的に組織の効果的な機能を促進する行動と定義されています(Organ, 1988)
この行動は、職務期待を超える自発的な活動と言われていますが、この論文では、OCBが常に自発的なものではなく、強い社会的または管理的圧力の下で行われることがあるという見解の元、研究を進められています。

今日の論文

Team Citizenship Pressure: How Does It Relate to OCB and Citizenship Fatigue
チーム市民権圧力:OCBおよび市民権疲労との関連性について
Small Group Research, 2023
Noy Eliyahu, Anit Somech

サマリ

  • 研究の目的は、チームレベルの概念として市民権圧力の現象を明らかにすること

  • 資源保存理論に基づき、チームの組織市民行動(OCB)がチーム市民権圧力と市民権疲労の関係を媒介し、上司のサポートがこの媒介関係を調整するかどうかを調査

  • 91の教育系プロチームを対象にした研究により、チーム市民権圧力がチームOCBおよび市民権疲労と正の関係を持つことが確認された

  • サポートが低い場合、チーム市民権圧力はOCBと強く関連するが、高い場合にはその関係は見られないことが示された

方法

  • イスラエルの9つの教育機関(主に中学校・高校)に所属する91のプロチームを対象に調査を実施

  • チームは特定の科目(例:数学、科学、文学)を担当する教師から構成され、それぞれチームコーディネーターが指導

  • 調査の対象は、合計385名の参加者のうち、294名がチームメンバー、91名がそれぞれの直接の上司だった

  • サンプルの基準は、チームコーディネーターとチームメンバーの60%以上がアンケートに回答することだった

  • 使用したスケール

    • チームOCB(組織市民行動):Vigoda-Gadotら(2007)

    • チーム市民権圧力:Vigoda-Gadotら(2007)に「私のチームでは、正式な役割には含まれない仕事を自発的に行うよう圧力を感じる」など追加

    • 上司のサポート(PSS):Lambert(2000)

    • チーム市民権疲労:Bolinoら(2015)

わかったこと:

チーム市民権圧力(Team Citizenship Pressure)は、チームの組織市民行動(OCB)および市民権疲労(Citizenship Fatigue)にどのように影響するか。また、上司のサポート(Perceived Supervisor Support, PSS)がこれらの関係を調整するか。

  • 仮説1 :チーム市民権圧力は、チーム市民権疲労と正の関連がある。
    → 支持される

  • 仮説2 (H2):チーム市民権圧力は、チームOCBと正の関連がある。
    → 支持される

  • 仮説3 (H3):チームOCBは、チーム市民権疲労と正の関連がある。
    → 支持される

  • 仮説4 (H4):チームOCBは、チーム市民権圧力とチーム市民権疲労の関係を媒介する。
    → 支持される

  • 仮説5 (H5):上司のサポート(PSS)は、チーム市民権圧力とチームOCBの関係を調整し、PSSが高いとその関連は弱まる。
    → 支持されない:PSSが低い場合にチーム市民権圧力とOCBの関連が強く、PSSが高い場合にはその関連が弱まることが示された

  • 仮説6 (H6):チームOCBは、チーム市民権圧力とチーム市民権疲労の関係を媒介し、この間接効果はPSSが高い場合に強くなる。
    → 支持される

論文から得た学びと活用場面

市民権圧力はチームメンバーにOCBを行うことを促すが、同時に疲労を引き起こすリスクがあることがわかりました。特に、上司のサポートが少ない場合にOCBの負担が増し、疲労感が高まることが明らかになりました。
市民権疲労を軽減するため、上司のサポートに着目してもよいかもしれません。


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