グローバルなバーチャルチームのプロセスのレビュー論文(1998~2014):論文レビュー
こんにちは、原田です。
今回は多国籍バーチャルチーム(Multinational Virtual Teams: MNVT)がどんなプロセスに直面するかに関するレビュー論文です。
国際的な文化的多様性は、チームの創造性や問題解決能力を向上させる一方で、誤解や対立を引き起こすリスクも伴い、文化の違いは、情報の解釈やチームメンバー同士のコミュニケーションに影響を及ぼし、時にはプロジェクトの成果に悪影響を与えることもあるそうです。
そこで、この論文ではMNVTが直面する課題に焦点を当てられています。
今日の論文
Framing the Effects of Multinational Cultural Diversity on Virtual Team Processes
多国籍文化の多様性がバーチャルチームのプロセスに与える影響の枠組み
Small Group Research, 2016
Soo Jeoung Han, Michael Beyerlein
サマリ
バーチャル環境で働く国際的および文化的に多様なチーム(多国籍バーチャルチーム: MNVT)が直面するプロセスおよびパフォーマンスに影響を与える要因を特定
1998年から2014年に公開された268本の論文を系統的にレビューし、MNVTのプロセスと成果に関連する重要な要素を特定
方法
バーチャルチーム研究に関する既存の実証的な研究を特定するために、1998年から2014年に発表された文献を系統的にレビュー
PsycINFO、ERIC、Sociological Abstractsなどの複数のデータベースから計268件の論文が取得され、そのうち60件が本研究の基準を満たし、分析対象とされた
分析は、チームプロセスに関連する「社会感情的プロセス」と「タスクプロセス」の2つの主要な流れに焦点を当てて行われた
わかったこと:
国際的および文化的に多様なチームがバーチャルな環境で直面するプロセスに影響を与える8つの主要な要因
タスク関連のプロセスと、社会感情的プロセスが相互に作用し、MNVTのパフォーマンスに影響を与えることが確認されました。
タスクプロセスに関連する課題
タスク関連のコミュニケーション:文化的な違いによるコミュニケーションの問題や誤解が、タスクの遂行に必要な情報共有を困難にする
コーディネーション:メンバー間での異なる文化的背景や時間帯の違いが、スケジュールの調整や役割の明確化を難しくする
期待の確立:異なる文化的規範や行動基準が、チームメンバー間での共通の期待を確立する上で障害となる
知識共有:文化的な価値観や知識に対する認識の違いが、情報の流れや知識の共有を妨げる
社会感情的プロセスに関連する課題
バイアスの克服チーム内での異文化に基づくステレオタイプや偏見が、チームの一体感や信頼の構築を妨げる
関係構築文化的な違いが、メンバー間の個人的な関係を築くことやチームの結束を強化することを難しくする
信頼の発展バーチャル環境でのやり取りが主にタスクベースで行われるため、感情的な要素を通じた信頼の形成が難しい
異文化学習異なる文化的背景を持つメンバー間でのコミュニケーションの違いが、誤解や摩擦を引き起こし、決定の質を低下させる可能性がある
論文から得た学びと活用場面
MNVTのパフォーマンスは、社会感情的およびタスク関連の要因によって大きく影響を受けることがわかりました。(例えば、文化的な違いがコミュニケーションスタイルやチーム内の信頼構築に影響を与える)一方で、バーチャルな環境では、従来の対面チームに見られるような文化的な偏見やステレオタイプを軽減する可能性もわかりました。
MNVTを発足する際にあらかじめ8つの課題をチームメンバーでシェアしたり、マネジメントの際に参考にしたり、チームプロセスについて備えて対処する手助けになりそうです!