組織変革への抵抗に関連する従業員の特性とは?:論文レビュー
こんにちは、原田です。
今回は従業員の組織変革への抵抗の先行要因に関する論文です。
組織変革に対する抵抗によって期待通りに進まない、または失敗することは珍しいことではありません。従業員の組織変革に対する抵抗はどのように発生するのでしょうか?
今日の論文
Personality, context, and resistance to organizational change
人格、文脈、組織変革への抵抗
EUROPEAN JOURNAL OF WORK AND ORGANIZATIONAL PSYCHOLOGY, 2006
Shaul Oreg
サマリ
組織変革への抵抗を多面的な構造として概念化し、従業員のパーソナリティと組織の文脈が大規模な組織変革に対する従業員の態度に与える影響を検証
177名の従業員を対象に、アンケート調査
抵抗の要因として、従業員のパーソナリティと組織のコンテクストを考慮
アンケート項目は、抵抗の感情的、行動的、認知的な要素を評価するために設計
パーソナリティとコンテクストの両方が、職務満足度、組織コミットメント、退職意図に関連する
主要な概念の定義と測定方法
パーソナリティによる抵抗傾向(RTC)
定義: 個人が変化に対して持つ内的な傾向。これは安定した性格特性として概念化され、変化に対する感情的、行動的な反応を予測する
測定方法: Shaul Oregによって開発された17項目のRTCスケールを使用
権力と威信:
定義: 変革によって従業員の組織内での影響力やステータスがどう変化するかの予想。特定の職位や役割の変更が影響を及ぼす
職業の安定:
定義: 変革が従業員の職の安定性にどう影響するかの予想。解雇や配置転換のリスクに対する懸念
内的報酬:
定義: 変革が従業員の仕事の挑戦度や自律性、興味深さにどう影響するかの予想。仕事の満足度に関わる内的な動機付け要素
管理への信頼:
定義: 組織のリーダーシップや管理者が変革を正しく導く能力や意図に対する従業員の信頼感
変革に関する情報:
定義: 変革について従業員に提供される情報の量と質。タイムリーで有益な情報が変革に対する従業員の態度に与える影響
社会的影響:
定義: 同僚や上司、部下など、職場の社会的ネットワークが変革に対して示す支持または反対の度合い
Affective Resistance(感情的抵抗)
定義: 組織変革に対する感情的な反応。例えば、変革に対する不安、怒り、ストレスなど
測定: 質問票の7項目で評価
Behavioral Resistance(行動的抵抗)
定義: 組織変革に対する行動的な反応。例えば、変革に対する反対行動や変革への協力拒否など
測定: 質問票の5項目で評価
Cognitive Resistance(認知的抵抗)
定義: 組織変革に対する認知的な反応。例えば、変革の必要性や利益に関する否定的な評価など
測定: 質問票の6項目で評価
わかったこと:
従業員のパーソナリティとコンテクストが組織変革に対する抵抗に関連していること
パーソナリティとコンテクストが従業員の抵抗に有意に関連していることが確認されました。特に、管理への信頼と社会的影響が抵抗の行動的要素に強く関連していることが示されました。
管理への信頼の重要性
管理への信頼は感情的、行動的、認知的抵抗のすべてに負の相関を示し、特に認知的抵抗に対して強い影響を与えている(β = -.42)。
パーソナリティの抵抗傾向
パーソナリティによる抵抗傾向は、特に感情的抵抗(β = .38)と行動的抵抗(β = .14)に強く関連している。
社会的影響の役割
変革に対する社会的影響は、感情的抵抗(β = .27)と行動的抵抗(β = .24)に正の相関があり、周囲の反応が従業員の抵抗に大きく影響している。
論文から得た学びと活用場面
従業員のパーソナリティとコンテクストが、組織変革の抵抗に影響するということがわかりました。特に管理への信頼と社会的影響の影響が大きいことがわかりました。
従業員のパーソナリティへのアプローチは難しくても、コンテクストへの働きかけによって抵抗を減らすことができるかもしれませんね。