暗黙のリーダーシップ理論(ILTs)がLMXに与える影響:論文レビュー
こんにちは、原田です。
今回は、暗黙のリーダーシップ理論(ILTs)がLMXに与える影響に関する論文です。
暗黙のリーダーシップ理論は、リーダーの行動に対する従業員の認識に影響を与える重要な要因とされているが、主に実験的環境で研究されてきていました。(この論文の発表は2005年)この研究は、このギャップを埋め、実際の組織環境でILTsの役割を明らかにすることを目的としています。
今日の論文
From Ideal to Real: A Longitudinal Study of the Role of Implicit Leadership Theories on Leader–Member Exchanges and Employee Outcomes
理想から現実へ:リーダー-メンバー交換と従業員の成果における暗黙のリーダーシップ理論の役割に関する縦断的研究
Journal of Applied Psychology, 2005年7月
Olga Epitropaki, Robin Martin
サマリ
暗黙のリーダーシップ理論(ILTs)がリーダー-メンバー交換(LMX)の質、従業員の組織へのコミットメント、職務満足度、及び幸福感に与える影響を検討する縦断的研究
439名の従業員を対象に2つの時点でデータを収集し、従業員が自らの管理者をどの程度「理想のリーダー」と一致していると認識するかによってLMXの質が向上することを明らかにした
また、暗黙的および明示的なリーダー特性の違いが、従業員の態度や幸福感に間接的な影響を及ぼすことが示された
方法
サンプル
イギリスの製造業およびサービス業の7社から439名の従業員を選出。1年後に271名が再調査に応じた測定
ILTsとその認識、LMXの質、職務満足度、組織コミットメント、幸福感を測定する質問票を用いた分析
構造方程式モデリングを使用して仮説を検証
わかったこと:
プロトタイプ差とLMXの関係(図1)
暗黙的リーダーシップ特性(プロトタイプ差)が小さいほど、LMXの質が高くなる(パス係数 = -0.55, p < .001)
暗黙的リーダー特性が実際のリーダー像に近い場合、従業員とリーダーの関係が良好になる
アンチプロトタイプ差とLMXの関係(図1)
暗黙的リーダー特性(アンチプロトタイプ差)はLMXに有意な影響を及ぼさない
ネガティブな特性(例: 独裁的、自己中心的)の一致度は、LMXの質と関連性が薄い
LMXが従業員成果に与える影響(図1)
組織コミットメント: LMXが高いと、従業員の組織へのコミットメントが強くなる(標準化係数 = 0.38, p < .001)
職務満足度: LMXは職務満足度に非常に強い影響を与える(標準化係数 = 0.63, p < .001)
幸福感: LMXは従業員の幸福感を高める(標準化係数 = 0.52, p < .001)
双方向的な因果関係(図2)
暗黙的-明示的リーダー特性の一致(プロトタイプ差)がLMXの質を向上させることを確認
逆に、LMXの質が高い場合、時間をかけて従業員はリーダーを理想的な特性に近いと認識する傾向がある(交差遅延効果)
結果は双方向性を示唆するが、特に「暗黙的リーダー特性の一致度がLMXの質に与える影響」が強い
長期的な変化
1年間の追跡調査で、LMX、職務満足度、組織コミットメント、幸福感が全体的に減少する傾向が確認されたが、そのパターンは性別や業種に関係なく一貫している
論文から得た学び
暗黙的リーダーシップ理論(ILTs)がリーダー-メンバー交換(LMX)を介して従業員の態度や成果に影響を及ぼす主要なメカニズムであることがわかりました。また、時間の経過とともにLMXが暗黙的特性の一致度に影響を与える双方向的なプロセスも確認されています。