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自己と社会的アイデンティティの状況ごとの反応:論文レビュー

こんにちは、原田です。
今回は、自己と社会的アイデンティティに関する論文です。

最近、企業のバリューと個人のアイデンティティとの向き合い方について考える機会があり、気になって調べてみました。気になったことがあれば先行研究をみるということが習慣化してきているように思います。笑

今日の論文

Self and Social Identity
自己と社会的アイデンティティ
Annual Review of Psychology, 2002
Naomi Ellemers, Russell Spears, Bertjan Doosje

サマリ

  • 所属するグループが自己とアイデンティティに与える影響を検討します。社会的アイデンティティの視点から、グループへのコミットメントと社会的コンテクストが重要な決定要因であると主張

  • また、個人やグループのアイデンティティが脅かされた際の動機と懸念についての分類を提示し、それぞれの分類において自己と社会的アイデンティティがどのような感覚的、情緒的、行動的反応に影響を与えるかを明らかにしている

方法

アイデンティティへの脅威とグループへのコミットメントの度合いに基づき、異なる状況ごとに自己と社会的アイデンティティへの影響を分類し、各分類における知覚的、情緒的、行動的な反応を調査

わかったこと:
自己と社会的アイデンティティの関心と動機と状況ごとの反応

ここでは「脅威の有無」を用いて状況を分類されている。「脅威の有無」とは、個人やグループのアイデンティティが揺らぎや不安、危険にさらされているかどうか、ということを意味している。

例1)個人に向けた脅威
グループ内での所属が否定されたり排除されたりする可能性。例えば、自分の地位が低く見られ「本当に属しているのか」と感じる状況
例2)グループに向けた脅威
グループ自体が否定的に評価される状態。例えば、所属チームが非難されるなどの際、強い愛着を持つメンバーはグループの価値を守るため積極的に行動する

  • 1: 脅威なし、低いグループコミットメント(無関与)

    • 懸念:自己が関わる必要がないため、正確性や効率性を重視した社会的知覚が中心である

    • 動機:周囲の社会的刺激に対して無関心であり、主に知覚的な応答に留まる

  • 2: 脅威なし、高いグループコミットメント(アイデンティティ表現)

    • 懸念:自己が所属するグループの独自性や意味の確立である

    • 動機:グループに対する愛着により、知覚だけでなく感情や行動に関わる反応が出現し、集団内での区別を通じてアイデンティティの表現が行われる

  • 3: 個人に向けた脅威、低いグループコミットメント(自己肯定)

    • 懸念:自己が不適切にカテゴリ化されることへの抵抗である

    • 動機:個人的な独自性を主張することで、強制的なカテゴリ化の影響を緩和しようとする

  • 4: 個人に向けた脅威、高いグループコミットメント(受容)

    • 懸念:グループから排除される可能性に対する不安である

    • 動機:自己のグループへの所属感を高めるために、受容されるための行動が強化される

  • 5: グループに向けた脅威、低いグループコミットメント(個別的移動)

    • 懸念:自己の所属するグループが価値を持たないと見なされることである

    • 動機:グループの評価が低い場合には、別のグループへと移動することで個人的なアイデンティティの保護を図る

  • 6: グループに向けた脅威、高いグループコミットメント(グループ肯定)

    • 懸念:グループの価値や独自性が脅かされることである

    • 動機:グループの統一感を高め、外部の脅威に対して防衛的な反応を示し、集団内での結束を強化するための行動が促進される

わかったこと:
先の分類を踏まえた示唆

  • グループへのコミットメントと脅威の組み合わせによる反応の違い

    • グループへのコミットメントが低い場合、脅威がないときは無関与であり、積極的な行動は見られにくい

    • グループへのコミットメントが高い場合、脅威がなくてもグループのアイデンティティを表現し、アイデンティティの独自性を主張する行動が増える

  • 脅威が存在する場合の個別的な反応

    • 個人に向けた脅威(低コミットメント):個人の独自性を主張し、自己肯定の動機からカテゴリ化に抵抗する傾向が強まる

    • 個人に向けた脅威(高コミットメント):グループから排除される不安が増し、グループ内で受け入れられるために積極的な適応行動が促進される

  • グループに向けた脅威に対する反応

    • 低コミットメントの場合:グループの評価が低い場合、グループから距離を取ったり、他の集団に移ろうとする傾向がある

    • 高コミットメントの場合:グループの価値や独自性を守るため、防衛的な態度や集団内の結束が強まる。また、脅威に対する積極的な行動として、競争行動や対抗意識が現れる

  • 感情的な影響

    • グループへの脅威が生じた場合、特にコミットメントが高いメンバーは強い忠誠心を示し、外部に対する反発や怒りが生じることがある

論文から得た学びと活用場面

自己と社会的アイデンティティの相互作用がグループへのコミットメントと状況的脅威の影響を受けることを示しています。
個人と組織のベクトルを合わせることの難しさを感じることが多々ありますが、その一歩目として今回の表に基づいて現状を整理してみると問題解決につながりそうだなと感じました。

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