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組織の変化に対応できる管理職の性格特性とは?:論文レビュー

こんにちは、原田です。
今回は組織変革に置いて、管理職の性格特性がどのように影響するのかに関する研究です。組織の変化に対応できるのはどんな性格特性なんでしょうか?

今日の論文

Managerial Coping With Organizational Change: A Dispositional Perspective
組織変革における管理職の対処方法:性格特性の観点から
Journal of Applied Psychology, 1999
Timothy A. Judge, Theresa M. Welbourne

サマリ

  • 管理職の組織変革に対する反応が7つの性格特性(統制の所在、一般的自己効力感、自尊心、ポジティブ感情性、経験への開放性、曖昧さへの耐性、リスク回避)によって影響されると仮定している

  • 6つの組織から514人の管理職を対象にデータを収集し、これらの仮説を検証した。これらの組織は大規模な再編成、トップマネジメントの変更、合併・買収、事業分割などの大きな変化を経験していた

  • 7つの特性は「ポジティブ自己概念」と「リスク耐性」の2つの要因に集約された

  • これらの要因は、変化への対処とキャリア成果に関連していることが示された

7つの性格特性の定義と理論的背景:

Locus of Control(統制の所在):
定義: 個人が環境を支配する能力に対する認識。内的統制の所在を持つ人は自分の成功を自分の行動や努力の結果と考えるが、外的統制の所在を持つ人は運や他人の影響を重視する。
理論的背景: Rotter(1966)が提唱し、内的統制の所在は問題解決志向の対処戦略と関連し、ストレスの悪影響を受けにくいとされている。

Generalized Self-Efficacy(一般的自己効力感):
定義: 個人が様々な状況で成功するための行動を遂行する能力に対する信念。
理論的背景: Bandura(1997)の理論に基づき、自己効力感は新しい、予測不可能な、またはストレスの多い状況で特に重要とされている。

Self-Esteem(自尊心):
定義: 個人が自分自身を評価する程度で、自分を有能で価値のある存在と認識すること。
理論的背景: Coopersmith(1967)によると、自尊心は職場の態度や行動と強く関連し、高い自尊心は仕事の満足度や再就職成功率と関連している。

Positive Affectivity(ポジティブ感情性):
定義: 幸福感、エネルギー、自信、社交性などの特性を持つ性格傾向。
理論的背景: WatsonとClark(1997)は、ポジティブ感情性は個人が変化や多様性を求める傾向があると述べている。

Openness to Experience(経験への開放性):
定義: 知的好奇心、創造性、寛容性、文化的洗練さなどを含む性格
理論的背景: CostaとMcCrae(1992)のNEO-PI-Rに基づき、経験への開放性は新しい状況に対する適応力と関連している。McCraeとCosta(1986)は、経験への開放性が効果的な対処戦略の利用と全体的な生活満足度に関連することを示した。

Tolerance for Ambiguity(曖昧さへの耐性):
定義: 曖昧な状況を好ましいと認識する傾向。
理論的背景: Budner(1962)は、曖昧さへの耐性が新しい経験に対する対処と関連することを示した。曖昧さに対する耐性が高い人は、曖昧な状況を脅威としてではなく、挑戦として捉える傾向がある。

Risk Aversion(リスク回避):
定義: リスクのある状況を避ける傾向。
理論的背景: KahnemanとTversky(1979)の研究によると、リスク回避は状況依存の変数とされていたが、Lopes(1994)はリスク回避が個人差変数である可能性を示唆した。リスク回避傾向の強い人は新しい状況やリスクのある状況をネガティブに捉え、回避しようとする傾向がある。


わかったこと:
管理職の組織変革への対処に影響する性格特性

7つの性格特性は「ポジティブ自己概念(Positive Self-Concept)」と「リスク耐性(Risk Tolerance)」の2つの主要な因子に集約されました。

ポジティブ自己概念(Positive Self-Concept):
この因子は内的統制の所在、一般的自己効力感、自尊心、ポジティブ感情性の4つの特性から構成されています。
定義: 自己の評価や認識がポジティブであること。
理論的背景: Judge et al.(1997)の研究によると、ポジティブ自己概念は個人の成功と強く関連しており、仕事の満足度や職務遂行能力にも影響を与える。

リスク耐性:
この因子は経験への開放性、曖昧さへの耐性、リスク回避の3つの特性から構成されています。

変化への対処能力の予測:
ポジティブ自己概念とリスク耐性の両方が、管理職の変化への対処能力を有意に予測することが示されました。

  • ポジティブ自己概念: 変化への対処能力と強く正の相関がありました(自己報告:R² = .69、独立評価:R² = .16)。

  • リスク耐性: こちらも変化への対処能力と正の相関がありましたが、ポジティブ自己概念ほど強くはありませんでした。

キャリア成果との関連性:
変化への対処能力は、以下のキャリア成果と有意に関連していました。

  • 給与: 高い対処能力を持つ管理職は、平均的に高い給与を得ていました。

  • 職位: 高い対処能力を持つ管理職は、より高い職位に昇進する傾向がありました。

  • 職務満足度: 変化に対処できる管理職は、仕事に対する満足度が高いことが示されました。

  • 組織へのコミットメント: 変化に対処できる管理職は、組織へのコミットメントも高いことが示されました。

論文から得た学びと活用場面

性格特性が組織変革に対する管理職の反応にどのように影響するかを示しており、ポジティブ自己概念とリスク耐性が変化への対処において重要な役割を果たすことがわかりました。
性格特性と言っても、定義や背景理論を確認すると開発可能性がある概念もあり、組織変革を成功させるための選抜だけでなく育成の足掛かりになりそうです。

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