リーダーのダブル・ループ学習はどのように行われるのか?:論文レビュー
こんにちは、原田です。
今回は管理職のダブル・ループ学習に関する事例研究です。
ダブル・ループ学習:
既存の前提や行動方針そのものに疑問を投げかけ、必要に応じてそれらを見直す学習プロセス。これは、従来のエラー修正(シングルループ学習)にとどまらず、問題の根本原因や背景にある価値観や信念を問い直すもの。Argyris & Schön(1978)によって提唱され、環境の変化に適応し、組織や個人の行動を本質的に変革するための概念として発展。
今日の論文
How do Leaders Engage in Double-Loop Learning?
リーダーのダブル・ループ学習はどのように行われるのか?
組織科学, 2022年
Nobuaki Toda
サマリ
食品メーカーZ社のリーダー13名を対象に、対話を通じたダブル・ループ学習のプロセスを分析した事例研究
リーダーたちは使用理論を見直し、建設的な相互作用を通じてリーダーシップを発揮し、組織変革を実現する方法を探った
方法
Z社のリーダーシップ研修を通じて形成された使用理論を持つリーダー13名とそのフォロワーを対象に、インタビューや比較ケーススタディを行った
ダブル・ループ学習の傾向を持つリーダーの特徴を識別する基準を設定し、リーダーの使用理論の改訂過程を分析
わかったこと①:
対話を通じたダブル・ループ学習のプロセス
対話が学習のカギ
ダブル・ループ学習のリーダーは、対話を通じて新しい視点を獲得し、使用理論を改訂していた組織変革の実現
ダブル・ループ学習を行ったリーダーは、赤字会社の立て直しやコストダウンなど、具体的な組織変革を達成していたシングル・ループとの違い
シングル・ループ学習のリーダーは現状維持に留まり、大きな変革を実現できなかったが、ダブル・ループ学習のリーダーは本質的な変化を促進した使用理論の更新
ダブル・ループ学習のリーダーは、既存の使用理論に新しい意味を加えたり、新しい理論を形成し、変革に対応していたフォロワーからの信頼
ダブル・ループ学習のリーダーは、フォロワーからの支持を受け、信頼関係を強化していた
分かったこと②:
経験学習モデルとダブルループ学習当事者の移り変わりの対比
経験学習は過去の経験に基づいた学習を循環させるのに対し、ダブル・ループ学習は前提自体を再評価し、深いレベルでの変革を伴う学習プロセスである
経験学習モデル
Kolbの経験学習モデルは、具体的経験→内省→概念化→新しい状況への適用という循環的プロセスで学習を進めるもので、過去の経験に基づいた学習を強調するダブル・ループ学習
ダブル・ループ学習は、既存の前提や行動方針そのものを見直すことを含むため、根本的な思考や行動の変革に重点を置く。新しい状況に適応するだけでなく、学習者が前提や価値観を問い直し、再構築するのが特徴
論文から得た学びと活用場面
ダブル・ループ学習がリーダーの使用理論の改訂を通じて組織変革を促進することがわかりました。特に、建設的な対話が重要な役割を果たしているようです。
また、個人的には経験学習モデルとの対比が大変理解しやすかったです。内部者同士の対話による学習の促進は大変興味深いなあと感じました…