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未来志向の違いによるチームパフォーマンスと目標コミットメント:論文レビュー
こんにちは、原田です。
今回は、未来志向の違いによるチームパフォーマンスと目標コミットメントに関する論文です。
未来志向の違い(FTOD: Future Time Orientation Differences)とは:
チームメンバー間における未来志向(将来の出来事を予測し計画する志向性)のばらつきを指す概念。このばらつきは、タスクの優先順位や時間配分、締め切りに対する認識の相違を生み出し、チーム内の調整やパフォーマンスに影響を及ぼす。未来志向の高いメンバーは長期的な計画や目標達成を重視し、未来を見据えた行動を取る傾向がある一方で、未来志向の低いメンバーは短期的なタスクや即時の課題に重点を置く傾向がある。この志向性の違いが調整されない場合、チームのパフォーマンスに悪影響を及ぼす可能性が高い。
今日の論文
Harmonizing Future Time Orientations: Moderated Impact on Team Performance
未来志向の調和:チームパフォーマンスへの影響におけるモデレーターの役割
Small Group Research, 2025
Wei Chen, Xuguang (Steve) Guo, Andy Yu, Yin-Mei Huang, Kanchan Deosthali
サマリ
この研究では、チーム内の未来志向の違い(FTOD)がチームパフォーマンスに与える影響を検討し、目標へのコミットメントや集団効力感などの要素がその関係をどのように緩和するかを探る
アメリカの大学の73チーム(263名)から収集されたデータをもとに、FTODがチームパフォーマンスに一貫して負の影響を及ぼすことを示した
また、目標へのコミットメントがFTODの負の影響を軽減することが判明した
これらの知見は、理論的および実務的に、異なる未来志向を持つチームの管理に重要な示唆を与える
方法
調査は横断的デザインを採用し、アメリカの大学で学ぶ学生チームを対象とした
変数の測定には5点リッカート尺度を使用し、因子分析で信頼性と妥当性を検証
チームの未来志向の差異、タスク相互依存性、目標コミットメント、集団効力感、そしてチームパフォーマンスが分析された
わかったこと:
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未来志向の違い(FTOD)とチームパフォーマンスの関係
FTODはチームパフォーマンスに統計的に有意な負の影響を与えることが確認された(β = -7.04, p < 0.01)
タスク相互依存性(Task Interdependence, TI)の影響
TIがFTODとチームパフォーマンスの関係を緩和する効果は見られなかった(FTOD×TIの係数は有意ではなかった)
目標コミットメント(Team Goal Commitment, TGC)の影響
TGCはFTODとチームパフォーマンスの負の関係を緩和することが示された(β = 38.98, p < 0.01)
TGCが高い場合、FTODの負の影響は低減され、チームパフォーマンスが向上する傾向があることが明らかになった
集団効力感(Collective Efficacy, CE)の影響
CEがFTODとチームパフォーマンスの関係を緩和する効果は確認されなかった(FTOD×CEの係数は有意ではなかった)
論文から得た学びと活用場面
未来志向の差異が大きいチームでは、パフォーマンスが低下する傾向がありますが、チーム目標への強いコミットメントがこれを緩和することが示されました。チームパフォーマンス向上のためには、時間的な認識の違いを調整することや、目標設定が重要であることが強調されています。