見出し画像

流動的かつバーチャルなチーム:論文レビュー

こんにちは、原田です。
今回は、流動的かつバーチャルなチームに関する論文です。

流動性のあるバーチャルチームは、特にコロナ禍以降で多くの場面で重要な役割を果たしています。いつでもどこでも働ける世の中でチームの特性はどのように変わっていくのでしょうか?

今日の論文

Fluid and Virtual Teams
流動的かつバーチャルなチーム
Small Group Research, 2024年
Tripp Driskell, Gregory Funke, Michael Tolston, August Capiola, James E. Driskell

サマリ

  • 現代の多くのワークチームは、地理的に分散したメンバーが技術を用いて連携する「バーチャル性」と、即時対応のタスクのために経験のないメンバーが迅速に集結する「流動性」の両方を備えている

  • 本研究では、流動性がチームのダイナミクスに及ぼす影響を探求し、流動的かつバーチャルなチームを効果的に支援するための示唆を検討

方法

  • 流動チームとバーチャルチームの特性を定義し、それらがチームのプロセスや形成される状態に及ぼす影響を調査

  • 流動性やバーチャル性のレベルに応じて異なるチームの特性を分析

わかったこと①:流動チームとバーチャルチームの特性

流動チーム (Fluid Teams) の特性:

  1. 迅速な編成: 技術や専門知識に基づき、タスクの即時対応のために短期間で結成される

  2. 未熟なメンバー関係: メンバーは過去に一緒に働いた経験がなく、チームとしての履歴がない

  3. 短期間の存在: タスク終了後にチームは解散し、再び集まる可能性は低い

  4. 時間の制約: 時間が限られており、即座にタスクに取り掛かる必要がある

バーチャルチーム (Virtual Teams) の特性:

  1. 地理的分散: メンバーが異なる場所にいて、物理的な接触なしに活動する

  2. 技術依存: コミュニケーションや協力がテクノロジー(例: ビデオ会議、チャットツール)を介して行われる

  3. 柔軟性: 地理的な制約を超えて、必要に応じて最適な人材をチームに加えられる

  4. 長期的な関係も可能: 必ずしも解散を前提とせず、継続的に協力し合うチームも存在する

流動的かつバーチャルなチームの特性 (Combination Characteristics):

  1. 両方の特性が合わさることで、迅速性や柔軟性が向上する一方で、 信頼構築 や コミュニケーション の課題が増す

  2. 「即席信頼 (Swift Trust)」 に依存しやすい: メンバーの能力や経験への即時的な信頼が求められる

チームの「流動性」と「バーチャル性」を基軸とした4象限のモデル
  • 低流動性/低バーチャル性:
    メンバーが顔を合わせて物理的に同じ空間で活動し、安定性のある従来型のチーム。例: NASAの宇宙飛行クルー

  • 低流動性/高バーチャル性:
    バーチャル環境で安定的に活動するチーム。例: COVID-19パンデミック中の「ロックダウンチーム」

  • 高流動性/低バーチャル性:
    物理的に集結して迅速に形成されるチーム。例: 医療の急性期対応チームや航空クルー

  • 高流動性/高バーチャル性:
    バーチャル環境で即時に編成される流動的なチーム。例: グローバルバーチャルチームや軍事指揮チーム

わかったこと②:
流動的かつバーチャルなチームのパフォーマンス

  • Input
    チームの仮想性(地理的分散と技術使用)と流動性(迅速な編成、未熟なメンバー間の相互作用、時間制約)

  • Mediator (媒介変数)

    • Attitudes (態度): チームの結束力や心理的安全性

    • Behaviors (行動): コミュニケーションや調整プロセス

    • Cognitions (認知): 共有メンタルモデルやトランザクティブメモリ

  • Output
    チームのパフォーマンス、満足度、継続性など

わかったこと③:
チームの「発展状態」(例えば信頼や共有認識)が時間の経過とともにどのように発展するか

  • 伝統的なチーム
    長期的な相互作用を通じて、信頼や共有メンタルモデルを徐々に構築

  • バーチャルチーム
    時間をかけて発展するが、物理的な接触がないため進行は遅れる

  • 流動的かつバーチャルなチーム
    時間の制約が厳しく、信頼や共有メンタルモデルを発展させる条件が整わない

わかったこと④:
流動的かつバーチャルなチームの課題を補うための提案

  • 事前の短時間ミーティングの実施:
    タスク開始前に、対面またはバーチャルで短時間のミーティングを実施することで、メンバー同士が互いのスキルや役割を把握し、基本的な信頼を築く機会を提供します

  • メンバーの背景情報の共有:
    チームメンバーの経歴や専門スキル、役割に関する情報を事前に共有することで、タスク遂行に必要な情報を迅速に伝え、効率的な協力を促進します

  • 役割の明確化:
    チーム内の役割とその責任を明確にすることで、メンバー間の混乱を防ぎ、スムーズなタスク遂行を可能にします。特に、マルチ組織間のチームでは重要です

  • タスクの自律性を高める設計:
    チームメンバーにタスク遂行の自由度や裁量を与えることで、短期間の協力における効率性を高める設計が効果的です

  • 類似性を強調する環境設計:
    チームメンバーが共通点(例: 同じ組織の所属、過去の経験)を感じやすくする環境を構築することで、迅速な信頼形成を促進します。

  • 事前経験のあるメンバーの選定:
    過去に流動的なチームで働いた経験があるメンバーを選定することで、短期間での効率的なパフォーマンスが期待できます

論文から得た学びと活用場面

流動性が高いチームは、従来の安定したチームに比べ、短期的な相互作用の中で信頼や共通認識を構築するのが難しいと示唆されています。一方でそれを補う方法がいくつか提案されているため、気になるところから試してもよいかもしれません。

いいなと思ったら応援しよう!

この記事が参加している募集