トランザクティブ・メモリー・システムのレビュー論文(1985~2008年):論文レビュー
こんにちは、原田です。
今回は、トランザクティブ・メモリー・システムのレビュー論文です。
「トランザクティブメモリシステム(TMS)」は、他の人の記憶システムに関する知識によって影響を受ける記憶のことを指します。複数の人々が協力して情報を保存、取得、伝達するためにトランザクティブメモリを積極的に使用するシステムとして定義されます。
簡単にいうと「誰が何を知っているか」についてチーム内で共有できているかという概念です。
関連note:
今日の論文
Transactive Memory Systems
トランザクティブ・メモリー・システム
Review of General Psychology, 2008年
Vesa Peltokorpi
サマリ
トランザクティブ・メモリー・システム (TMS) の研究は拡大し続け、さまざまな分野で理論的発展と実証研究が行われている
本研究は、TMS理論の概観、関連する概念との区別、理論拡張のレビュー、そして今後の研究方向性について議論している
TMSは、グループ内での情報分担と共有認識を基盤とする集団的認知システムであり、その効率的な機能がグループのパフォーマンスや学習に寄与することが示されているが、明確な課題も存在する
方法
本研究では、TMSに関連する理論と実証研究を学際的な視点からレビューし、課題の特定と理論の拡張を試みた
研究の焦点は、TMSの形成要因、測定、関連概念との関係、そしてさまざまなタスクや分析レベルにおける適用性である
わかったこと:
専門性認識と認知的相互依存の重要性
グループメンバーが互いの専門性を認識し、認知的に依存し合うことが、TMSの効率的な機能に寄与する専門性の共有がパフォーマンスを向上
グループ内の専門性の分担と共有が、タスクパフォーマンスやイノベーションを促進するグループサイズとTMSの効率性
グループの大きさがTMSの形成と維持に影響を与え、大規模なグループでは専門性認識の共有が困難になる安定性と専門性配分の精度の重要性
グループの安定性と正確な専門性配分がTMSの効果的な機能に必要である顔対面(FTF)コミュニケーションの役割
FTFコミュニケーションがTMSの形成を助け、非言語的手がかりが情報交換を強化するTMSのデメリット
誤った専門性認識が、情報が適切に処理されない原因となり、特に時間的制約が厳しい状況ではグループの効率性を低下させるタスクと知識の特性
複雑なタスクでは、メンバーの専門性に基づく分担と知識の相互依存がより重要であるイノベーションの促進
グループメンバー間で補完的な情報を新しい方法で組み合わせることで、TMSがイノベーションを促進する
論文から得た学びと活用場面
TMSの理論的拡張は有望である一方で、特に現場研究の欠如や複雑なグループ構造における実践的課題が指摘されています。顔対面でのコミュニケーションや専門性推論のメカニズム、タスク文脈の違いなどが今後の研究課題として挙げられています。