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降田天『少女マクベス』読了
降田天さんの『少女マクベス』を読みました。
作品情報
【タイトル】
少女マクベス
【著者】
降田天
【出版社】
双葉社
あらすじ
「神」とまで呼ばれた天才少女はなぜ、自身の手がける舞台の上演中に死んだのか?
演劇女子学校に入学した結城さやかは、劇作家を目指している。同学年には同じく劇作家志望で、学内一の天才と謳われる設楽了がいた。了は俳優の能力を引き出し、観客を魅了する舞台を作り上げる卓越した才能をもっていた。了の手がける舞台に上がりたい、了に認められたいと俳優志望の生徒達はこぞって渇望する。次第に周囲から「神」とまで崇められた了は、横暴な振る舞いをしても良い舞台を作るためだと許された。しかしそんな了は突然、自分の手がける演劇の上演中に舞台から転落死する。不幸な事故だと片づけられたが、翌年の春に入学してきた新入生・藤代貴水は全校生徒の前で高らかに宣言した。「わたしは、設楽了の死の真相を調べに来ました」――さやかは貴水に巻き込まれる形で、了と生前の関わりのあった生徒を調べることになり・・・・・・演劇を愛する生徒達が内に潜んだ「殺人者」を暴き出す、眩く鮮烈な学園ミステリー!
感想
登場人物たちと同じ高校生のころに読みたかったと感じました。もちろん大人になった今読んでもおもしろかったのですが、
悩みなんてなさそうに見えてじつは心に抱えたものがある、
弱いところを隠して強く見せる、
仲間にはわからないようなところで強かに出し抜く…
表面からはわからない内面は高校生の時期に特に強く感じること。この時期特有の感性を持ったまま読めたら物語はさらに刺さったように思えるのです。
この物語は、女子校、しかも演劇学校という特殊な世界を舞台にしていて、少女たちの内側と外側をよく描いているように感じました。
裏と表を持った少女たちの中で、さほど裏表がなかったのは主人公のさやかと新入生の貴水。このふたりだからこそ真相に迫ることができたのかなと思います。
さやかは劣等感の塊にもかかわらず、隠し事を持たず、脅迫にも屈せず信念を持ち続けている点に強さを感じます。ただ、あまりにも正直すぎるのでひとりだったらこの一連の事件に飲まれていたかもしれませんが、さやかとは別の強さを持つ貴水と一緒に行動することで飲まれずに立ち向かうことができたのだと。
また、一連の事件を通してさやかに成長があったように思います。いい意味でも悪い意味でも裏表ないさやかは、他人の裏表に気がつきません。(そもそも劇作家を目指しているのに人に興味がなさそうなのですが)
しかし、事件を通して他人の内面を知り、葛藤を知り、挫折を知り、野心を知り、その上で書いたのが「少女マクベス」。おそらく今まで書いた脚本から大きく成長した内容になっているのでは、と推測できます。
グッと惹きつける冒頭から始まり、徐々に判明していく事実、そして真相への迫り方など心地のいいテンポで展開するため一気に読んだ作品です。
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