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見事なイヤミス 辻堂ゆめ 『ダブルマザー』読了
辻堂ゆめさんの『ダブルマザー』を読みました。イヤミス好きにはたまらない内容で、最高にイヤな気持ちになりました!(褒め言葉!)
作品情報
【タイトル】
ダブルマザー
【著者】
辻堂ゆめ
【出版社】
幻冬舎
あらすじ
飛び込み自殺を図り、死亡したひとりの女性。
なぜか、母親を名乗る女性が二人現れて。
二人の母親が、娘の死の真相に迫る衝撃のミステリー!
うだるような真夏日、ひとりの女性が駅のホームに飛び込んだ。そこに、なぜか母親を名乗る二人の女性が現れる。
性格も家庭環境も全く異なる二人の共通点はただひとつ。娘のことを何も知らない。
死んだのは自分の娘なのか。なぜ、死んだのか。違うなら自分の娘はどこにいるのか。二人の母親は、娘たちの軌跡を辿り始める。
感想
死んだ娘がじつは他の家の娘と同一人物であったという衝撃的なスタートから始まり、2人の母親が娘の真相を追っていくストーリーの中で、読者はそれぞれの家庭環境や娘の人柄などを徐々に知っていく形で展開していきます。
ところどころで「え!そうだったの?」という真実が明らかになっていくので、どんどん続きが気になるような構成。
2人の母親が「きっとこれが真実であろう」という結論を出したところでミステリーの物語としては完結してもいいのですが、この作品の素晴らしいところは、なんと言ってもその後のどんでん返しとイヤな気持ちになる終わり方。つまりイヤミスですね。気持ちがいいくらいの見事なイヤミス展開でもう鳥肌ものでした。
以下、どんでん返しについてネタバレありです。
2人の母親は「電車事故で死んだのは温子の娘の鈴である」と結論を出しました。その結論は、2人の娘が心優しく、お互いが親友のことを大切に想っていたことを表しています。そして、一連のできごとは母親たちに至らないところがあったことを気づかせてくれ、これからの人生に向き合うきっかけにもなったのです。
そんな美しいシナリオが語られた後に続いたのが、それを覆すエピソード。これがまぁイヤな結末への一歩として相応しい毒っ気のあるエピソードなんですよ。
そのエピソードというのが、鈴の生物学上の父親である武流が鈴の遺品をDNA鑑定に出すというものです。最初からこうしていれば、あれこれもめたり調べたりしなくても死んだのはどっちの娘だったのか一発でわかりますもんね。でも、温子はDNA鑑定に否定的でした。それを武流が怪しんだですよね。本当の父親は自分じゃないのかもしれない、それがバレることを恐れてDNA鑑定しないのでは…と。
「電車事故で死んだのは温子の娘の鈴である」という結論を読んでいる読者は、検査結果で温子との親子関係を認める結果は出るだろうけど、父親とはどうなんだろう。武流じゃない他の誰かか?とドキドキするわけです。
でも、結果は温子とも武流とも親子ではなかった。
え、じゃあ死んだの誰!?詩音ってこと!?
しかも武流はこの結果を温子に黙っている。言えよ!母親たちの結論間違ってるってことじゃん!黙ってるってことは結局自分と鈴に親子関係がないことを知るのが怖くて安心したかっただけじゃねーか!ほんと最初から最後まで自分勝手で幼い男だな!!
と読んでて心がざわざわしました。
結局、死んだのは鈴と詩音の同級生のくるみということがわかります。この時点で鈴と詩音の性格の悪さにさらに心がざわざわ。
母親たちが語っていた、いい子ちゃんの鈴と詩音はどこ行った。
そして最後、鈴と詩音が楽しそうに温子とすれ違うところで物語は終わります。
こっわ〜
母親たちは子どものことよくわかってないし、父親も子どもより自分が大事だし、子どもも子どもだし…
もう…もう…そう終わらせるか〜!!最高!!!
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