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一雫ライオン『二人の嘘』読了

一雫ライオンさんの『二人の嘘』を読みました。
445ページの作品ですが一気に読み上げてしまうほど惹き込まれる作品です。


作品情報

【タイトル】
二人の嘘

【著者】
一雫ライオン

【出版社】
幻冬舎

あらすじ

女性判事・片陵礼子の経歴には微塵の汚点もなかった。最高裁判事への道が拓けてもいた。そんな彼女はある男が気になって仕方ない。かつて彼女が懲役刑に処した元服役囚。近頃、裁判所の前に佇んでいるのだという。違和感を覚えた礼子は調べ始める。それによって二人の人生が宿命のように交錯することになるとも知らずに......。感涙のミステリー。

感想

幻冬舎の公式ページによるとミステリー作品になるそうですが、ミステリーというよりも、切なく美しい恋愛小説でした。

誰もが羨む能力や美貌、富や名誉を持っているのに幸福と思わず、逆に、都合のいいように妻を扱う夫との結婚生活を不幸とも思わず、ただ淡々と毎日を過ごしていた主人公の礼子。

元服役囚について調べていくうちに徐々に変わっていく礼子の心情描写が素晴らしく、感情が豊かになるに従って情景描写も豊かになっていく様子は映像が頭に浮かぶようで一雫さんの文才を感じました。

元服役囚の蛭間もとても魅力的で、ここまで口数が少なく、また、主人公と共に過ごす時間が少ないのにこんなにも魅力や人柄、愛情深さが伝わってくるのもやはり文のうまさなのだと思います。

交わした会話は少ないのにお互いが愛し合っていることが十分すぎるほど感じられ、2人の境遇も相まってどうか幸せになってほしいと心から願いました。

結末をあのようにしたのは、作中で人間的に大きく変わった礼子がこれからどう生きていくかという余白を残したのかなと。あの結末を受けて読後はしばらく作品の余韻から抜けられませんでした。

今回初めて一雫ライオンさんの作品を読んだのですが、他の作品『スノーマン』も切ない感じの作品のようなので読んでみたいと思います。


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はらまき
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