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眼底に潜む 老いと病・4~地形断面図は1700円~

がんサバイバーが視力を取り戻す闘病記。
抗がん剤の副作用と1型糖尿病による合併症で網膜症、黄斑浮腫を発症。

2021年どうやって生きるの

2021年1月7日
年始早々に眼科で蛍光眼底造影検査を受けて毛細血管の撮影をしました。
もちろん血管は老朽化していて出血した形跡はあったのですが、医師が予想していたよりは少なかったようです。
「初期症状よりは進行していますが中等症になりかけですね。
意外とそれほど悪くはないです。
もっと進んで重症かと思っていたので悪いほうの予想が外れて。今回はレーザー光治療は見送ることにします」
私も絶対に網膜はボロボロで失明するのも時間の問題だと思っていたので、いい意味で予想がはずれました。
とはいえ経過観察は必要です。

少し安心したことろでCoffeeやお茶をたくさん飲んで、毛細血管を撮影するために点滴した蛍光造影剤を排出。蛍光色の黄色が早く抜けないと白目の部分が黄色く染まってしまうから。(と言われたのですが本当に染まるかどうかは知りません)

さて2021年はやらなければならないことがたくさんあります。
子宮体がん経過観察、抗がん剤副作用のリハビリ、眼の治療。
そして仕事と治療の両立。収入と生活費と医療費のバランス。
思うように動かなくなった体でどう社会に適応して行くかしっかり計画を立てなければなりません。
私はテレビの報道番組を作る仕事をしているのですが、目が不自由になっては原稿が書けないし、映像の編集や文字スーパーの確認も出来ません。音声は聞こえても画面が見えなければテレビ番組の制作は出来ません。
いろいろ考えても今までと同じ仕事はできないはずです。
異動願いを出すか。無期限で休職をするか。

じゃあその先は?どうやって生きるの。

【眼の治療memo】
1月14日 
眼球注射2回目。確実に効果あり。
ただ打ってしばらくは春先のボラ状態でぼんやりしか見えない。でも実はボラってよく見えてる説もある。
次回注射は2月。症状が落ち着いたら白内障の手術。
もう少しクリアに見えるようになるらしい。
不安と期待。偏光グラスかけると目が楽。
一生サングラスは必需品だな。
2月13日
3回目の眼球注射。かなり視力回復してきた。
0.5から0.6くらい見えている。
いまは目薬のせいもあってぼんやりしかみえていないが。
来週検査してまた写真撮って次は
白内障のこと、決めるのかな。

眼球の注射は効果があった

1本5万円の高額な注射、しかも怖い思いをして打ったあと2日もぼんやりしか見えないのですが、確実に効果がありました。
逆にそんな苦しい思いをして効果が出なければ困ります。

医師の「視力を失うかもしれない」という言葉は私にとってがん告知以上に受け入れがたいものでした。
おそらく医師の発言の半分は、糖尿病の暴飲暴食の生活習慣を戒めるために、あえて強く言ったのだと思います。
しかし私が先天的な1型糖尿病であることを知ってからは急にやさしくなりました。
「やることがたくさんあって混乱するかも知れませんけど、ひとつずつ片付けて行きましょうね」と励ましてくれます。
最初の診察で衝撃を受けた白内障の治療は、まず目の前の、いいえ目の底の黄斑浮腫に着手して様子を見ながら手術をすることになります。
今は自分の存在さえ見失いかけて、視力と共に失うものの大きさに怯えています。
じゃあ失われないものって何だろう。
今までぼんやり生きていたんだな。
目に映るものの私は一体何を見てきたのか。
自問自答する日々です。
しかしコロナ禍の今だからこそ「物事を見る力」を失ってはならないと思うようにしています。少しずつでもいいから治療の経緯を文章にまとめることで自分の気持ちを整理する、私にとって書くことが前進するための最善の方法です。

2021年1月。
運転免許、適性検査の再挑戦は。
「あーあと少しですね」で不合格。
しかし「コロナ禍の特別措置」というまさかの恩恵で3か月の更新期間延長。

3月3日 桃の節句
抗がん剤で抜けた髪が復活。初めてリンス。わずか5センチほどのベリーショート。
さらさらヘアーになってうれしい。
本人にしかわからないが。

3月16日
運転免許更新の視力検査。
三度目にして合格。本当にうれしい。
写真は丸刈り頭。

運転免許証の更新ができた喜びは、自信と希望と何より治療を続ける原動力になります。
仕事も読書もバイクも、まだ失いたくはありませんから。
とにかく病の治療は早期発見が大切です。
様々な病の正体を暴いてくれた眼底検査は本人3割負担で1700円でした。
最近テレワークが増えて急に視力が落ちたと感じたり、老眼が進んだと思っている人、
糖尿病予備軍の人には特に「眼底の地形断面図」を見ておくことをオススメします。
(おわり)

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