「精米年月日」が「精米時期」に変わる意味…。
お米の袋に必ず記載してある「精米年月日」。
実はこの度、法律改正によりこの記載が変更になります。
そもそもお米は野菜と同じく生鮮食品であるため、袋詰めされてはいますが「加工品」ではないため「賞味期限」や「消費期限」の記載はありません。
記載があるのは「精米年月日」のみです。
この「精米年月日」の記載は、食品表示法・食品表示基準により義務付けられています(ただしBtoCの場合のみ)。
それがこの度、記載すべき内容が「精米年月日」ではなく「精米時期」に変更になったのです。
この変更点の目的について、農林水産省の資料には以下のように記載されています。
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① 消費者は、精米年月日の新しいものを手に取り購入する傾向があるため、精米年月日から一定期間経過後の精米は、十分に食用可能であるにもかかわらず、精米年月日が古いという理由だけで廃棄又は販売外とされ、食品ロスが助長されていること、
② 米卸売業者は、「精米年月日」を起点として早く販売しなければならないという商慣習により、小売・量販店側から精米後短期間での配送が求められ、これにより日ごとの多頻度・少量配送が助長され、昨今のトラック・ドライバー不足とあいまって物流コストの増大につながり、その増加コスト分が商品価格に転嫁されたり、物流が滞ることにより精米商品そのものの配送が困難になりかねない状況が生じていること
から結果として消費者にも不利益な状況となっているため、 精米年月日表示を見直すべきとされた。
「精米年月日」表示に加えて、10日の幅を持たせた「精米年月(上/中/下旬) 」表示を可能とすることで、
①過度な鮮度重視の商品管理及び消費行動によって生じる食品ロスの削減
②精米後短期間での配送などの多頻度・少量輸送を助長する即配慣行の緩和等の物流の合理化に伴う精米商品の安定配送の促進や中間コストの削減
が効果として見込まれる。
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ということだそうです。
ご覧のように、変更の目的は「消費者にとっての分かりやすさ」のためではなく、「フードロス」の観点や物流等事業者の負担をなくすため…なのですね。
お米には様々な品種がありますが、見た目はどれも同じように見えるため、購入時の選択に必要な情報が非常に少ない商品です。
私が消費者向けの講演で話すネタのなかでウケが良いものの一つに「失敗しないお米選び」というものがあります。
また私が小池精米店の店頭でお客様によく聞かれるのが「おすすめのお米はどれですか?」です。
いずれの事例も「いかにお米選びに必要な情報が不足しているか」を如実に表しています。
例えばスーパー等で並んでいるお米の袋を想像してみて下さい。
売り場のPOPも含め、産地や生産者情報、品種の名前の記載はあっても、そのお米がどういった味なのか、どういった料理に合うのか、どのような気分の時に食べるのか、といった情報…食べる側が最も知りたい情報は書いてありません。
例えばパンを考えてみましょう。
パン売り場で「おすすめのパンはどれですか」と聞く方は滅多にいらっしゃらないと思います。
パンはその形や色、香りでだいたいの味の想像ができるからです。
お米…生米ではそれができません。だから上記のような話になるのです。
そういった状況のなかでの数少ない情報が「精米年月日」なのです。
米が入っている袋が透明であれば中身を見ることもできます。中身が見えれば、例えば「真っ白なお米が入っているお米は質が良くない」「粒の形が揃っている方が良い」といった見分け方はあります。しかし最近は高級感を出すためか、中身が見えない袋のほうが圧倒的に多くなっています。
そうなるともう余計に「精米年月日」の記載は貴重な情報になるわけです。
法律改定により、「精米年月日」は「精米時期」になります。
なんと「上旬・中旬・下旬」という何ともざっくりな表示になるのです(緩和措置によりしばらくは「精米年月日」の記述のままでも大丈夫です)。
しかし消費者心理としては農水省の資料にあるように、精米年月日が新しい日付を選びたくなるものです。
そういった行動によりお米が廃棄されるのであれば問題ですが、業界的には「ごはん」であればともかく、「生米」の場合はまず廃棄しません。
例えばそれこそ同じスーパー内の弁当で使ったり、卸業者に戻されたりします。卸業者に戻ったお米は値段を安くして米屋等の業者に販売されているのです。
つまり、廃棄と精米年月日の話は、実はあまり関係が無いのです。
むしろ「消費者がお米を選ぶ際に必要な判断材料が失われた」…ということの方が大きいのです。
小池精米店は法律が変わってもそのまま「精米年月日」で通す予定です。
その方が管理がしやすいからです。
弊社は精米時に必ず記録をつけています。「精米年月日」はその記録における大事な情報です。
お客様から問い合わせがあった場合に、「精米年月日」とその記録を付け合わせれば、そのお米が「どの産地のお米を、どれくらいの量で、どういった設定で精米し、どのような出来上がだったのか」が分かるからなのです。
もちろん「精米時期」にしたうえで、「精米年月日」は別途コードを割り当てるなどすれば管理自体は出来ると思うのですが、弊社のような超零細企業にとっては負担が大きいため(意味のない負担のため)そのままにする予定です。
「精米年月日」が「精米時期」に変わったとて、消費行動はおそらく同じでしょう。「精米時期」が近いものを選ぶことになります。
もしスーパーなどで「精米年月日経過後三週間たったものは棚から下げる」という慣習が「良くない」というのであれば、むしろ「三週間経過してもお米の味は変わりません」と説明すればいいのです(この辺りのお話しはまた後日触れたいと思います)。
それこそが農水省が掲げている「目的」に適うことだと思うのですが…。
いずれにしても今回の制度改定は、消費者不在と言わざるを得ないでしょう。今にも増して消費者がお米を選ぶ際に頭を悩ますことになることは想像に難くありません。そこがお米販売に携わる者にとって残念で仕方がありません。
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「楽しくなければお米ではない!」
有限会社 小池精米店
三代目 小池理雄(ただお)
五ツ星お米マイスター
東京米スター
6次産業化プランナー(中央サポートセンター登録)
社会保険労務士
東京都米穀小売商業組合所属
東京都ごはん区メンバー
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