おすすめのフォント・書体・タイポグラフィ本 23選
デザインの仕事に欠かせないフォント・書体・タイポグラフィ。最近、社内のいくつかのプロジェクト・案件でメンバーとフォントについて熱く議論することが続いていることもあって、オフィスの書庫にあるフォント関連本と私物の本をまとめて、入り口にフォント本コーナーを作ってみました。
せっかくなのでその中からおすすめの本・大好きな本・ユニークな本をいくつか紹介したいと思います。書体選びに悩んだり、フォント調べたり、作字するデザイナーの方の参考になれば幸いです。
タイポグラフィの基本ルール プロに学ぶ、一生枯れない永久不滅テクニック
文字そのものについての基礎知識、フォント・書体の分類や特徴、具体的な文字組や演出方法、レイアウトにおける文字の使い方、さらに作字によるロゴや書体づくりの考え方まで丁寧に解説されていて実用性高いです。初心者の方はまずこの本あれば、といえる教科書的一冊。
1、2章はタイポグラフィの基本。3章の「レイアウトスタンダード」では、ライン、箱、グリッド、動き、放射、ランダムといったさまざまなレイアウトパターンが紹介されていて、文字組の美しいレイアウトデザインを学ぶことができます。4章の「書体の選び方と演出スタイル」では、様々なシーンでどんな書体選びをしたらいいかが豊富な事例とともに紹介されています。5章の「文字を作る」では、ロゴデザインを作成するにあたっての組み立て方やアレンジ法などのデザインテクニックが学べます。
誌面デザインも見やすいし、事例も魅力的。見せる文字と、読ませる文字の両方が会得できる内容ではないでしょうか。
フォントのふしぎ ブランドのロゴはなぜ高そうに見えるのか?
欧文フォントの専門家・ドイツ在住のMonotype小林章さんによる、「欧米の街なかで撮影した写真とコラムで紐解く、知られざる欧文フォントの秘密」がテーマの本。
ルイ・ヴィトン、ゴディバ、ディオールなどよく知っているあのブランドロゴはなぜ高級に見えるのか?ヨーロッパの街をつくっているフォントは?など、切り口がとてもおもしろくて「知らなかった!」な発見ばかりの一冊。街中の写真とともに掲載されているのでイメージが伝わりやすく、欧文フォントに囲まれた生活の様子が伝わってくるのがとてもいいです。
フォントがどの国の誰によって作られたといった知識も大事ですが、小林氏曰く「日本ではフォントの一般常識にとらわれすぎ」なのだそうです。「フォントは見た目で選んでOK」という章、フォントに対する固定観念をやわらげてくれて、とても興味深く読めました。
欧文書体―その背景と使い方
小林章さんの本続きます。こちらは欧文書体の成り立ちや使い方が解説されており、実用性の高い入門書。
たくさんの欧文書体が紹介されており、それぞれの書体に対して「洗練」「無骨」「汎用的」「古典的」「機能的」…といった特徴が記載されていて、書体を選定する際にとても役に立ちます。社内でも愛読者が多く、提案書にフォントのバックグラウンドを添えることもあったりと、とてもお世話になっております。
「頼りになる定番書体」「悪い書体はないが、悪いフォントはある」「いろんなガラモン、いろんなカスロン」「恥をかかないための組版ルール」「時代を軸に選ぶ書体」「お国柄を軸に選ぶ書体」「雰囲気を軸に選ぶ書体」…など、これらの見出しだけでも読んでみたくなりませんか?
欧文書体 2 定番書体と演出法
前作「欧文書体―その背景と使い方」では触れられなかった「どう使ったら効果的なのか考えて使い分ける」「書体デザイナーの意図を読み取る」をテーマに、HelveticaやGaramondなどの定番の欧文書体がいつ、どこで生まれ、どう組まれているのかの解説と、著名なフォントデザイナーのインタビュー、これらのフォントの使い方や組み合わせ方などが収録されています。デザインの用途に合わせ、意識してフォント選びができるようになると思います。
小林章さんが欧米各地で撮影した写真を用いて解説してくださっています。国によっても歴史や形が異なるので、その国らしさを演出している書体を楽しく学べます。
欧文書体のつくり方 美しいカーブと心地よい字並びのために
上記2冊の続編で、欧文書体をデザインする際のポイントを解説した本。
美しい文字、ロゴを作るのに必要な「目を使う部分」に焦点を当てています。線や面がどう見えるか、錯視とはなにか、どうやって視覚調整をしているかなどが細かく解説されており、片っ端から唸ってしまう内容。普段使っているフォントは、実は様々な視覚調整がされていることが理解でき、フォントの美しさについて理解を深めることができるでしょう。「好きだから」の数歩先の視点が持てます。
ロゴ作成時には、どうリズムを作るか、黒みが平均化されているか、どこまで形を変えていいのか、スペーシングはどの空間を基準にするかなど、工夫のコツが詰まっています。欧文ロゴを作るデザイナーは必携の一冊。
[改訂版]実例付きフォント字典
読んで字のごとくフォント字典ですが、実例がついているので使っているイメージがしやすく、楽しく読めます。和文フォント2496書体、179の実例収録。主要フォントの成り立ちやどんな意図をもって作られたかが書いてあり、選定の参考になります。持っていると重宝します。
フォントの話をしよう
様々なフォントを使ってデザインされている表紙(裏表紙も)からしてめちゃくちゃかっこいい!広告やエディトリアルなど、文字を使うグラフィックデザイナーによるフォントや文字の扱い方を中心としたタイポグラフィのインタビュー集。
第一線で活躍されているプロフェッショナルな方々(好きなデザイナーさん多い)が実際に手掛けているプロジェクトごとに、どんなアプローチでフォントに向き合ったのか、どういう理由で選んだのか、どう手を加えていったのか、それぞれの理由・視点と、どう形作っていくかを追求していくこだわりの様子が垣間見れます。公共サインからコーポレートロゴ、雑誌まで取り扱うジャンルが幅広いのもよいです。フォントメーカー側のインタビューもあり。
祖父江慎さんの寄稿「明朝体とひらがなフォント」のコーナーが好きです。
英文サインのデザイン 利用者に伝わりやすい英文表示とは?
翻訳家と欧文書体デザイナーによる、わかりやすい英文サインのための解説本。実際に街中にある、見た目も内容もわかりにくい英文サインを改善し、日本を訪れる人に不便さを感じさせないようにどのように文字を伝えればよいか、本当に伝わる英文サインを考察・提案しています。
日本人的感覚だと気づきにくい、おかしなサインがたくさんあることに気づきます。たしかにそうだよなぁ、と思わず苦笑い。公共デザインに関わるデザイナーには特におすすめですが、普段デザインするなかで英文の使い方(デザインとしての英語)、ほんとうに正しいのか?これで伝わるのか?を振り返るという点でも多くのデザイナーが読むべき一冊だと思います。
冒頭に、ヨーロッパ各地のよい印象のサインがいくつか掲載されています。20年以上前にオランダに行ったとき、スキポール空港のFrutigerで統一されたサインは、やはり美しくて「フォントの美しい空港」として記憶に残っています。
レタースペーシング タイポグラフィにおける文字間調整の考え方
レタースペーシング(文字間調整)だけで1冊ってすごい。レタースペーシング、字詰めやカーニングってデザイン学ぶ初期にやるものですが、意外と感覚的だったり、経験則でやってきた感じがあるし、時代や人によって違ったりするので正直よくわかってないな…と、ちゃんと勉強し直したいです。そういった感覚的な部分を図版とともにしっかり言語化してくださっていてとても勉強になります。ロジカルさに感服してしまうのですが、あとがきでも触れられてる「なんとなくからの卒業」に超共感&超納得です。
アートディレクションもグッとくるし特設サイトも素敵。
MdN EXTRA Vol. 5 絶対フォント感を身につける。
デザイン誌『MdN』の人気特集を合本させつつ新たな記事も加えた一冊。絶対フォント感=ひと目でどのフォントか見分けられる力。という切り口が面白いですね。ふだん目にするあらゆるデザインにおける書体・フォントって気になりますよね。デザイナーであれば自然と観察していると思いますが、それが言い当てられたら気持ちよいし、見える世界も変わってくるはずです。
フォントのディテールを拡大してみたりと、エレメントの図解も豊富。事例とセットになっており、楽しく学ぶことができます。
『愛のあるユニークで豊かな書体。』 フォントかるたのフォント読本
フォントかるた制作チームによるフォント解説本。フォントかるた48書体を含めた全89種のフォントの歴史、用途、実例が紹介されています。定番書体からキャラクター強めなフォントまで、そのチョイスがユニーク。そして解説がおもしろいというか正直というか、いいところやよくないところも書いてあります。MS明朝「あまり評判がよくなかった」やMSゴシック「あまり愛されることなく」…とか、ちょっと切なく胸が痛くなりました笑。でもそういうのも含めてフォント愛に満ちていると感じる、「愛のある」一冊だと思いました。楽しく学ぶにおすすめ。
続・和文フリーフォント集
フォントグラフィック・大谷秀映さんによる、80種類のフォントが収録されたフォント素材集。フォントが圧倒的に個性的なうえに、それを本の想定や誌面全体のデザインで表現しているところが圧倒的。大谷さんによると、
フォントを作る
そのフォントで今までにないタイポグラフィをデザインする
フォントをイメージするような写真を撮りに行く
本はフォントのカタログとして機能するように徹底的にディテールにこだわって作り込む
本文もすべてオリジナルフォントで組む
誌面がとにかく楽しいです。もう、隅々まで見たくなります。フォント愛が凄まじい。こういうのをアウトプットとして世に送り出せるのがほんとうに尊敬です。特設サイトあります。
タイポさんぽ―路上の文字観察
街中の看板やロゴを集めた本。デジタルフォントの時代を生きているからこそ、古めかしい市井の文字が逆に新しく感じることが多々あります。この本は、著者であるグラフィックデザイナー・藤本健太郎さんが自ら散歩中に出あったタイポグラフィとの出会いを厳選されたというもの。単に収集するだけでなく、そのタイポに対する観察や文章がしっかりと添えられていて、まさにデザイナーの愛情を感じることができる一冊です。地元・長野の看板も多数収録されていて嬉しかったです。
この本に影響されて、僕も以前地元でタイポさんぽしてみました。
平野甲賀100作
グラフィックデザイナー/装丁家・平野甲賀さんの作品集(電子書籍)であり語録集。平野さんが手掛けた装幀はなんと7000。この作品集は、これまで手掛けた作品にいまいちど自ら手を加えたものが100作収められていて、その収録作品を観て、読んで、そして販売サイトに移動して購入できるようになっています。
作品の素晴らしさは言わずもがな、後半の語録集もとてもよいです。平野さんがどんなスタンスで装丁の仕事に向き合っていたのか、文字やデザインをどう捉えているのか。本を取り巻く人たちのことを思い浮かべ、相手がどう反応するか、相手の気持ちを探り出すことは欠かせない、技術的なことはその次であると。人間味あふれるユニークな描き文字は、そんな甲賀さんの人柄そのものなのかなと感じずにはいられません。
文字の中に風景が見える。もともと文字が持っている歴史・背景を想像しながら、遊びながら形をつくっていく。そんな平野さんの作品の素晴らしさに酔いしれます。文字とデザインの金言が散りばめられています。
オンスクリーン タイポグラフィ 事例と論説から考えるウェブの文字表現
PCやスマートフォンなどスクリーン上のタイポグラフィに関する論説と事例集。オンスクリーンはユーザーの環境によって見た目が変わったり、ユーザーが独自で調整できる点などで随分と性質が異なり、制作者が意図しない表示になったり、印刷物の文字組みでできることが難しかったりするわけです。
僕自身オンスクリーンが主戦場ですので、オンスクリーンでの文字の見え方はとても興味深いし、おもしろいと思っています。制約のなかでどうやったらきれいに見えるかを追求するため、たくさんの事例とともに学べる内容です。このジャンルの本少ないので、ありがたいです。
文字のデザイン・書体のフシギ
神戸芸術工科大学ビジュアルデザイン学科にて行われた、祖父江慎氏、藤田重信氏、加島卓氏、鈴木広光氏による特別講義を収録。
このうちフォントデザインの藤田重信さんの講義では、藤田さんが開発された筑紫明朝を含めた複数の明朝体を細かく(ほんと細かく)比較しながら解説され、どの場面でどの書体がふわさわしいか、なぜ読みやすいか…を考察しているお話がすごく面白いです。
僕自身も「この明朝は好き(嫌い)」というのがあって、ではなぜそう思うのか?客観的に理解する術がなかったのですが、これを読めばかなり細かいところまで理解を深め、新しい知識を得ることができると思います。
ほんとに、フォント。 フォントを活かしたデザインレイアウトの本
ingectar-eさんによる「フォントを活かしたデザインレイアウト」の本。デザインするときにイメージにあうフォント選びって難しい。この本では、NG例とOK例を比較してフォント選びのポイントを学び、経験値を高めていく作例がとても充実しています。「こうすればこんな劇的に変わるのか!」がよくわかります。とても実用的で勉強になります。デザインはフォントをいかに活かせるかで決まるよなぁとつくづく思います。
市川崑のタイポグラフィ 「犬神家の一族」の明朝体研究
アニメ『新世紀エヴァンゲリオン』、ドラマ『古畑任三郎』、CM『資生堂TUBAKI』など、のちの映像表現に多大なる影響を与えたと言われる市川崑監督『犬神家の一族』での明朝体のテロップ表現。L字型配置の極太巨大な明朝は強烈ですが、この本ではこれらの表現について、映画評論とデザイン評論の2軸で語られています。多くの図版とともに明朝体の照合実験やグリッドを用いた研究がまるで謎解きのように展開されて見応えたっぷり。マニアックで奥深く、アツい一冊。
そういえば、僕がいまの会社に入ったときの名刺、名前がL字配置でした。最初もらったときうぉーって感動しました。
新装復刻版 現代図案文字大集成
大正時代〜昭和初期に活躍されたグラフィックデザイナー・辻克己氏編著による手書き図案文字図鑑の新装復刻版。オリジナリティに溢れ、レトロ感ありながら今見ても新しさを感じる図案文字ばかり。
文庫本サイズの小さく軽い本で、ページ数も密度たっぷりでいまにも踊りだしそうなおもちゃ箱的な誌面。パラパラしているだけで刺激と元気がもらえます。序文を平野甲賀さんが書いています。
もじ鉄 書体で読み解く日本全国全鉄道の駅名標
鉄道と駅の看板・文字が好きな人を「もじ鉄」と定義。いいですね。僕も旅行行くと駅名標思わず撮ってしまいます。北海道から沖縄まで全166社(路線)が掲載されているという大作。
「国鉄っぽいフォント」というフォント名が使われてる駅、大阪で人気というヒゲ文字、小樽や矢岳の強烈な筆文字、図案が使われる駅名ロゴなど、全国の駅名標が楽しめます。地元・須坂もあって嬉しい。
これ読んだら、旅行の楽しみがひとつ増えること間違いなし。
作字百景 ニュー日本もじデザイン
SNSで日々目にする作字の世界。文字をグラフィックデザインとして見るという「間」のようなものが好きです。デザイナーそれぞれの自由で個性的なスタイルと、それを実現する技術の高さにうっとりします。『作字作法』もほしい。
となりのヘルベチカ マンガでわかる欧文フォントの世界
書体を擬人化したキャラクターたちが登場するマンガ。4コママンガやコラムで、それぞれの書体の成り立ちや特徴の理解を深めることができます。
・ヘルベチカ:高い汎用性を持つ書体の王様
・フーツラ:機能美を追求した幾何学的造形
・ゴッサム:力強く信頼感を与える書体
など、欧文フォントの特徴を性格などに反映しているのと、こまかい豆知識もセットでコンパクトな短編としてまとめられています。楽しく読めて一度でスッと入ってくるので、フォントを身につける一つのアプローチとして面白いです。
アイデア No.392 2021年 1月号
世界各地、10組の書体デザイナー/ファウンドリーの紹介。各国の書体デザインと普及や使用状況について。ハングル、タイ、香港、アラビア、台湾など普段見慣れない地域の書体デザインが新鮮。学びというより、教養として楽しく読めました。特集の詳細はこちら。
なお、付録のニューカレンダー、表紙の一部に活版印刷、中身は活版印刷した活字をデータ化して組まれているという、味わい深い仕上がりですね。
番外編(絶版の本)
新かんてい流
会社の書庫でフォント系の本を漁っていたら目に留まったのが『新かんてい流(1975年初版)』。江戸の歌舞伎から生まれた勘亭流は看板や広告で愛用されているものの、昔のままの書体では現代の人には読みにくいということから、伝統を踏まえながら読みやすいように書体に工夫を加え「新かんてい流」と名付けたとあります。自分の名前拾ってみました。
新書体(グラフィック・エレメント集)
1973年刊行。1971年〜1973年の間に制作された日本字新書体の本です。表紙だけでもグッとくるものがありますが、中身もすごいです。今見ても「新」しい!と思えます。これはお宝。
おわりに
デザインにおいて、文字やフォントの学習は欠かせません。定番の教科書的な本はいくつか持っているとよいと思います。そしてタイポグラフィや描き文字は、もともとある文字をどう組み合わせ、どう形を変えていくか、そのアイデアや技法に触れるているだけで頭をやわらかくしてくれます。この記事を書いているあいだ、ずっとワクワクが止まりませんでした。この記事を読んでくださった方に響く本があったら嬉しいです。
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ふだん、仕事を通じて心がけていることや気づいたデザインに関する思考とTipsをTwitterで発信しています。よろしければフォローいただけると嬉しいです。
ハラヒロシ @harahiroshi
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