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Vol.49 何の仕事で生きていくのか(2)~カンブリア宮殿より~
前回に引き続き、今回もテレビ番組『カンブリア宮殿』、モード学園の学長である谷まさる氏の取り組みと私の気付きについてお話をさせていただきます。
1.態度教育の徹底
今も現役で教壇に立つ谷氏は授業の最初に、指の先、足の先まで神経をいきわたらせ、まるでお客様に対して頭を下げるような、徹底した挨拶を指導されていました。深々と頭を下げて、大きな声であいさつをするという礼儀は、社会人として最も重要なマナーの一つです。
また、授業参加に対しても遅刻3回で欠席1回とする、など、徹底した姿勢でのぞんでいます。
谷氏はこういった姿勢を「徹底したスパルタ教育」と呼んでおられました。
「甘い教育は、教育ではない」、この場合の「甘い」「厳しい」というのは、学生に対してのあたりや指導する際の姿勢が強いかどうか、ということではなく、社会的に厳しい、ということだと、進路指導担当の教官もお話されていました。
このような考え方は、小学校や中学校といった学校教育現場だけでなく、社会全般における「教育活動」全てにおいて、大きな意味を持つ「態度教育のための価値観教育」と、とらえることができます。
なぜあいさつをするのか、なぜ時間を守るのか、なぜ服装を整えるのか、といった指導を行う際に、頭ごなしにさせるのではなく、意味と目的をきっちりと理解させ納得させることが大変重要だということです。社会に出てからその厳しさに驚くのではなく、練習できるうちに、本番に備えて練習しておきなさい、という、実は、社会の厳しさを教えるための、徹底した「未来への心配り教育」と考えることができます。
2.教育とは
谷氏は、教育とは「難しい事を山積みにして出来ない人を落とすことではない」といいます。モード学園では年間約200の課題が出されるそうですが、出しっぱなし、やらせっぱなしではないということです。
「出来ない人を何とか出来るようにして、世の中に送り出すこと」これこそが教育だとおっしゃっていました。
私は、この「出来ないことを出来るようにして『世の中に送り出す』」という部分に大変大きな共感を覚えました。
人を教育するとは、その人が自立し、世の中で生きていけるようにする、ということに他なりません。だから私たちは、その人の長所に気付かせ、長所を伸ばしていく教育や、善悪を真剣に伝える教育、いつでも本気で関わる教育をしなければいけない、ということです。
目の前の児童、生徒、学生、ご自身のお子さん、部下や新入社員。あなたとの関わりによって、「どうやって世の中で生きていくのか」ということが決まるのです。
3.どう生きるのか、という仕事観
どう生きるのか、という精神論も大切ですが、谷氏は、「何の仕事で生きるのか」ということこそが大事だとおっしゃっていました。
これは、社会人として自分の強みに自分で気付き、必死でそれを高め、市場価値にしていくという「その道のプロづくり」に欠かせない姿勢だと再認識しました。
また、最後のまとめとして、司会の作家、村上龍氏が「教育とはエネルギーのやりとり」「日本企業はOJTばかりでなく、技術+姿勢・心構えを教えてなくはならない」とお話されていたのが大変印象的でした。
私たちの提唱する【原田メソッド】は、まさに教育を通して生き方の姿勢や心構えをお伝えしているものであり、人としての考え方・態度・魅力や人格を土台とする能力こそが、全ての働く人々にとって必要なものであると考えています。
以上、2号にわたって、モード学園の教育方針から得た示唆についてお話しました。大きな学びを得たと同時に、私自身が目指す教育と日本の未来の
あり方・進み方について、大きな勇気をいただくことができました。
次回は、教育と指導者の姿勢について、私が先の選挙中のある出来事から考えたことをお伝えする予定です。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
(感謝・原田 隆史)2009年10月27日発行
*発行当時の文章から一部を変更している場合があります。