普通の人でいいのに!を読んで思ったサブカルとアニオタの断絶
話題となっているコミックDAYSの漫画「普通の人でいいのに!」が、哲学サロンでも話題なったのですが、私が読んで考えた感想を綴っていきたいと思います。
漫画を読んだことない、という人向けに作者さんのツイッターを貼っておきますね。
内容は、ワナビー(何者かになりたいと憧れている)である33歳女性が、自分より上位のサブカルコミュニティに属しつつも、そこで自分の「何も無さ」に打ちのめされていくといったもの。
ツイッター上でこの漫画のキャラクターについて賛否がありましたが、この漫画を、サブカル系とはまた違う畑のアニオタが読んだらどう感じるのかなと思い、アニオタ系の友達2人に送ったところ、一人目からきた感想は「異世界すぎて意味がわからなかった」、二人目からきた感想は「コマ割りが読みにくかった」でした。転生ではない文脈での異世界、そして内容に一切触れずコマ割りだけに言及したコメントに思わず笑ってしまったのですが、この反応に至るにあたり大きく頷く部分がありました。
何が言いたいかというと、サブカル好きとアニオタは一緒くたにされやすいですが文化が全く違うのです。ちなみに私はサブカル系ではないのでサブカルの定義が甘いかもしれませんが独断と偏見で分けるなら
サブカル→音楽、映画、アイドル、市民権をわりと得てるアニメ、泣きゲー要素が高いエロゲ、市民権を得ているゲーム、ファッション、現代アート、漫画ならアフターヌーン、スピリッツ、スペリオール系
アニオタ→市民権を特に得ていないアニメ、エロゲ、声優、なろう系ラノベ、乙女ゲー、シチュエーションCD
という興味のカテゴリーわけになると思っています。
ちなみにラブライブ!やリゼロなどはアニオタど真ん中というよりも、サブカル系やマイルドヤンキー系の心を掴んだコンテンツではないかと思っています。
そして先ほどのアニオタの友達が言った「異世界すぎて意味がわからなかった」という言葉の真意についてですが、これは「コミュニティに属することへの価値」というものがアニオタには特にありません。「普通の人でいいのに!」では主人公は好きなもの、興味のあるものを共有できるサードスペースを持ちそこでアイデンティティを強化していましたが、そういった必要性がないのです。
どういうことかというと、サブカル系でもアニオタ系でもぶち当たる「自分ってなんのために生きてるんだろう問題」が深く関係しています。自分でなんのために生きているんだろう、自分の存在意義ってなんだろうと考えてた時にサブカルチャーを自分の内側に取り込み、自分に色をつけてアイデンティティを確立していくのがサブカル系のカルチャーとの向き合い方。
対してアニオタは「キャラの関係性や、その世界に浸ることで生きがいを強く感じる」のです。別にそこに自分はいませんし、自分はその世界となんの関係もありません。モブおじでいいのです。キャラたちが仲良ければいいのです。(※夢女子も世界やキャラに心酔です)
つまり、サブカルというのは、選ばれしコミュニティーに属すために、認め合うために知識で競いあう性質があり、対してアニオタというのはコミュニティーに属す必要がないので、知識で競い合うことはないが「いかに自分はその世界やキャラクターに心酔しているか」をアピールするという性質を持っていると思います。
つまり、自分という真っさらなアバターがあったとしてそこに装備品をつけていくようにカルチャーを纏い、自分自身を強化して見せ合うのがサブカルチャー的な共同体だとすれば
自分という真っさらなアバターをドロドロに溶かし、粒子レベルにしたものをその世界に空気のように漂わせるのがアニオタの幻想というわけです。「今これを好きというのが正しいしイケてる」という風潮はなく、能動的に好きなジャンルを掘っていくだけで完結するのです。
つまり最初に話した「異世界すぎて意味がわからなかった」の真意は、そういった文化や構造の違いにあるように思います。
「コマ割りが読みにくかった」の真意はよくわかりませんが、今までの考察を踏まえて考えると、自尊心の形が違いすぎてキャラクター同士の関係性がよくわからなかったという感じかもしれませんね。普通の人でいいのに!というタイトルは主人公が彼氏に求める希望であると同時に、主人公が他人から一番投げかけられたくない言葉なのではないでしょうか。
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