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相談相手がいない人が、創作の壁にぶち当たった時に読んでほしいメモ

毎日、小説とか漫画原作のネタを考えているだが、よく壁にぶち当たる。そして気軽に相談できる相手がいない。壁打ちをしてくれる友達はいるが、自分とキャリアが近い人だったり、やりたいと思っているジャンルが似ている人が私の周りにいないので、一人で考えるしかない。しかも何が正解かわからない。正解が無いというのは自由なことでもあるが、吐きそうにもなる。というか吐きながら考えてる日もある。

今日、持ち込んだ漫画原作の返事がきた。一回他社に持ち込んだのだが、そこでは「媒体を読んでいる読者層とずれる」という理由で、大きく内容を変えるしかなくなり断念することになった。

そこで別の出版社で働く心優しい知り合いが、他の媒体にも聞いてくれた。結果は渋いものであった。「読者層のズレ」をまたも指摘され、それ以外にも内容の根本を覆した方がいいと言われた。私が提出した作品はドロドロした気持ちが渦巻く退廃的なものであったが、先方が求めてきたものはわかりやすくいうならば「スカッとジャパン」のようなもの。読者が気持ち良いものにしないと数字が取れないというような内容であった。

今までだったら、そこで「方向性が違いますね」と諦めていたと思う。けれども、今日はそうならなかった。むしろ自分は「自分がやりたい世界観」に固執しすぎて読んでくれた人が気持ちよくなるとかを一切考えておらず、それが敗因なのでは無いかと思えた。また今のうちに強いこだわりを捨て矯正すべきでは無いかという考えも浮かんだ。なぜかといえば自分の価値観に固執しても100万部出せていればいいが、大ヒットを出した経験も無いので、自分の持っているこだわりがもしかすると足枷になっているのでは無いかと揺らいだからである。

けれども、読者が気持ちいい作品というのがいまいちどういったものか浮かばなかった。そもそも人付き合いが好きでは無いし、不条理に主人公がモテる作品も得意では無い。つまり、「読者が気持ちがいい」ものがどういったものかを理解しないまま目指しても、余計に陳腐になるだけだという考えがよぎった。

そこで恐れ多いが、作家として超一流の大大先輩に連絡をとり聞いてみることにした。よくわからない人に否定されると苛立つが、自分が尊敬している、しかも超一流の大大先輩の意見であれば、根本から否定されようが素直に受け入れることができる。そう思って今日の編集さんからきたやりとりを相談してみた。

ちなみにこの大大先輩は数千万部の大ヒット作を出している作家さんで、キャリアも長いので私よりもいろんな例を見てきているはずである。長いキャリアの中で培った自分なりの考え、そして周囲のライバル作家たちのエピソードを踏まえて助言くださった。

大大先輩によると、私の「読者が気持ちいい作品を作るべきか」という考えと「自分のこだわりを貫くべきか」という考えはどちらも「正解であり不正解」であった。

どういうことかというと、

「連載当初、自分の理想形ではないが人気を取るために、人気であるワードを入れて描いた」ことにより累計一億部以上出た作品もあれば

「打ち切りが決まっていたが、人気のあるワードを取り入れたこと」によりアンケート結果が改善し、累計三千万部以上でた作品もあり、さらに

「一切読者を意識せず自分がかっこいいと思う世界観を描いた」ことにより累計五千万部以上でた作品もある、ということ。

つまりどちらも正解とはいえず、「読者が心地いい」という感覚も輪郭がないので掴もうとしても掴めないことが多々あるということ。そして、これらはどちらとも正解と言えないが、結果を出すことが商業の世界では最低限必要であると助言を受けた。

確かに自分がやりたいことをやって結果が伴えば一番よりが、そこで悩むよりもまず先に「価値」を形成することを意識するのがプロである、という意見であった。なるほど、つまり私が悩んでいたことは若きヴェルテルのような精神的なものであり、仕事の悩みではなかったのかもしれない。

創作系の仕事はその辺りも曖昧で、自分が自分のままいることが許される、むしろ自分らしさを見失うことは劣化を意味するようなところがあるが、そういった精神的なものに振り回される前に、「価値作りをする」ということを念頭に置く必要があると気付かされた。

気がついた時の率直な感想としては「ゲームのルールが変更になったんだな」というもの。自分が今までやってきたゲームとは違うゲームに今後挑戦していくべきなのだという視点が生まれた。

これは余談だが、書籍と漫画原作両方をやっている身としては、小説や書籍の方が「好きなことがやりたい」を追求しやすい風潮にあると思う。編集者さんからの意見はそこまでなく、よく言えば個性を尊重、悪く言えば放任であると思う。一方で漫画原作は編集さんの意見がかなり反映されるように思う。読者の層が明確だからか風潮が違うのかはわからないが、チームプレイという側面が強い。

もし似たようなことで、悩んでいる人がいたら、個性云々で悩む前に商業のプロとしての「価値作り」いついて考えてみてほしい。もちろんいろんな価値がある。ただ趣味ではなく商業でやっていくには商業的な価値は無視できず、人格と作品傾向を結びつけてしまうことが足枷を生み出す可能性もあるのだなと思った。


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