乳房洗浄とバイオフィルムについて
親牛の乳房炎で農家さんから乳房洗浄を頼まれた。
先輩獣医さんと一緒に乳房洗浄の準備に取り掛かった。
留置針の外筒を乳頭に入れて、輸液チューブにつないで1分房に対して高張食塩水1Lを流し込み、5〜10分くらい?置いてから手絞りで出す。先輩獣医さんは乳頭に外筒をスポッと一瞬で刺してサクサク進めていくけど、私は乳頭内に入れるのすら戸惑って時間がかかった。
というかこんな長い管入れられるのか。。
乳頭内の解剖勉強しなきゃ。。
高齢のおばあちゃん牛で乳房は床につきそうなくらい大きくて、地面スレスレで手絞りした排出液をバケツに集めるのにも一苦労。地味な作業にしては時間もかかるし、これを繰り返すのかあ。。結構大変だなあと感じた。
乳房洗浄が終わってから農家さんにセファゾリン入れといて下さいと頼み、治療は終了した。
乳房炎になってる乳頭の中には一部の病原細菌たちがバイオフィルム(BE)という菌の凝集体を作っていることがあるそう。
バイオフィルムとは細菌が自分たちの身を守るために菌体表面?に作る膜で、菌体外多糖、タンパク質などから構成されている。お風呂場や流しで見られるヌメヌメの正体がこのバイオフィルムらしい。このバイオフィルム(ヌメヌメ)を作ることで、細菌たちは抗生物質や免疫細胞から身を守る事ができる。
地球環境で水のあるところには大抵バイオフィルムが見られるらしく、細菌が感染している乳房内でも作られている。
そこに高張食塩水を入れることで、高濃度のNaイオンやClイオンの電荷によって菌とバイオフィルムのイオン結合がとれてバイオフィルムが分解される。菌を丸裸?にして弱らせて、さらにそこに抗生物質を投与することで効果的に死滅させることができるとのこと。抗生剤も少なくて済むし、すごい!
時間かかるし地味な作業だけど、抗生剤打つだけより断然治り早そうだし、
農家さんも出来そうだし良さそう。
やっぱ治るまで毎日やったほうがいいのかな?
大腸菌性乳房炎で急性のやつでも、慢性のやつでも効果はあるのかな。
今度ショート乾乳についても調べてみよう。
あと、乳房の解剖も!
参考文献
2019年7月の家畜診療
乳牛の難治性乳房炎による乳房炎洗浄とショート乾乳を併用した治療の効果
2020年2月の家畜診療
難治性感染症と戦うために必要なバイオフィルムの基礎知識
トータルハードマネジメントサービス「バイオフィルムと乳房炎」