仕事でつかえる、会計学②。
「財務会計講義」および「中小企業会計論」を参照:
会計理論と会計基準
もし、すべての会計処理を経営者の自由意思に任せた場合、財務諸表を作成するにあたって、恣意的な会計処理を行い、自分に都合の良い利益金額や財務状態を作成する危険が発生する。一定の規制を加えることが、そのため必要であり、「会計基準」が活用されている。
同基準は、公正妥当なものとして社会的な承認を得ているとの意味で、「一般に認められた会計原則(GAAP:Generally accepted accounting principles)とか一般に公正妥当と認められる企業会計の基準」と呼ばれる。
「一般に公正妥当と認められる会計原則の基準」に関する文言:
金融商品取引法:(金融商品取引法193条)
会社法:(会社法第431条)
税法:(法人税法22条4項)
以上、3法にはそれぞれ、公正妥当な基準によるべきとの文言がある。
企業会計原則
日本では、アメリカの会計基準を参考にして制定した「企業会計原則」が、最初の本格的な会計基準である。企業会計基準委員会が2001年に設立され、「企業会計基準第O号」という名称で設定されている。企業会計基準委員会が公表する文章には、(A)企業会計基準、(B)企業会計基準適用指針、(C)正式な企業会計基準が設定されるまでの間の実務取り扱いを暫定的に定める「実務対応報告」がある。
国際的統合
会計基準の国際的な統合も積極的に推進されている。会計基準が国ごとに相違すると投資者による外国企業への証券投資や企業による外国での資金調達の妨げになるからである。1973年「国際会計基準(IAS:International Accounting Standard)」、2001年「国際財務報告基準(IFRS:International Financial Reporting Standards)」が会計基準の制定を継続している。
コンバージェンス:国内・国際基準の主要な差異を調整することにより、国内・国際基準を実質的に合致させる。
アドプション:IFRSの基準を自国内の会計基準に取り込むこと。
「金融商品取引法」のディスクロージャー制度を管轄する金融庁では、日本企業が連結財務諸表を作成する場合に準拠する会計基準として、①日本基準、②アメリカの会計基準、➂国際会計基準、④修正国際基準、以上の採用を認めている。
中小企業の会計基準
中小企業を規制する制度会計は、会社法会計と税務会計である。同2法の「一般に公正妥当な会計慣行」に基づき、2005年に「中小企業の会計に関する指針」(中小指針)を公表するに至った。これは、「大企業(公開会社)向け会計基準」(企業会計基準)を簡素化したものである。
中小指針のポイント:
拠ることが望ましいとされる会計処理のガイドラインであり、法的な強制力はない。また適用範囲については、会社法上の株式会社の内、次の会社は除く:
①金融商品取引法の適用を受ける会社及びその子会社・関連会社。
②会計監査人を設置する会社及びその子会社。
中小指針は、引き続き高度な会計処理を伴うものであったため、中小企業庁はワーキンググループを結成し、2012年に「中小企業要領」を正式に公表した。中小企業要領が指向しているのは、実態に即した身の丈にあった会計ルールであり、その属性に即した会計基準になる。
<Reference>
河崎照行「中小企業会計論」2016
桜井久勝「財務会計講義 第18版」2007