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「ほしがき」 はらまさかず
「ほしがき」
また、母から干し柿が届いた。
いらないって、言ってるのに。
なんでわざわざ送ってくるんだろう。
べとべとしてて、見た目も悪いし。
もう30年、毎年冬になると、送ってくる。
干し柿、
好きじゃないのに。
ただ、
覚えていないほど、小さな時の写真に、
おいしそうに、干し柿を食べているのがあった。
干し柿、なんだかかっこ悪い。
大学生の時は、なんで送って来るのかなと義務的に食べていた。働きはじめの頃もそう。でも、結婚して、子どもができて、干し柿はどんどんおいしくなって、待ち遠しくなっていった。
今年は、退職した父が、はじめて柿をむいてくれたらしい。
母は干すだけになって、少し楽になったと、教えてくれた。
干し柿、特別好きなわけじゃないけど、
こんなにおいしいものが世の中にあるのかと思うくらい、おいしい。今年のは特に。
干し柿が好きだったって、30年かかって思い出した。
お母さん、お父さん、ありがとう。