泥臭い新規法人営業からの転身。リモートで行う広告バナー運用がいま最高におもしろい
私は株式会社teamgateというスタートアップに近い10人規模の会社で、SNSを用いた企業のフランチャイズ広告運用を行っている井上博人です。
誰もが知っているであろう某大手人材系企業の新規法人営業から、第二新卒として短期間の転職というリスクを冒してまで、いまの会社に身を置くようになった経緯をお話しします。
大学卒業後、法人営業がやりたくて求人広告の世界へ
実家が千葉県佐倉市だったこともあり、地元の敬愛大学(千葉市稲毛区)で経済学を専攻。
就職活動では、対人関係の仕事をしたいと、飲食店などtoC向けの仕事も考えたのですが、大手の飲食店は全国転勤が懸念でした。
実家にも帰りやすい関東県内にいたかったので、転勤がなく本社で勤務できる法人向けの仕事に絞ったところ、求人広告業界でだれもが知っている老舗の某大手人材系企業の求人を見つけました。
エンジニアを主体とした採用メディアや、女性向けの転職といった中途採用メディアをはじめ、就活情報を取り扱った新卒採用メディアや人材紹介事業、IT派遣などあらゆる業種や職種に対応した人材サービスを提案している会社でした。
仕事を探している求職者だけでなく、働き手を探している企業の担当者の方とも関わる機会がある。たくさんの人と接して「いろいろな人を見る」ことができる点に魅力を感じ、2018年4月に入社しました。
千代田区にある中途採用メディアを提案する新規顧客の開拓を行う営業部隊に配属。一日中お客様企業に電話をかけ(テレアポといいます)、新しい求人ニーズを探る仕事に明け暮れました。
ノルマとして一日120件のテレアポが課されていて、厳密に管理されていました。
朝出社して帰社するまで、電話の前にかじりついて会社から渡された企業リスト(中小企業が多かったです。エリア的には北区・文京区・千代田区を担当しました。)を一つひとつ潰していく結構ツラい仕事。またお客様訪問が重なってもこの120件という数字が減るわけではなく、厳しい状況でした。
同期はおよそ80人。このうち営業として配属されたのが約60人で、そのなかの40人ほどがこの中途採用担当のオフィスで一斉にテレアポをしている風景は壮観でした。
昔風の根性論でも飛び出しそうな世界ではありましたが、1社でもアポイントが取れたらそこにいる同期全員で「よっしゃー!がんばったなー!」と、人の業績を喜び合う風土があり、気持ちの救いでした。
目標である一日120件のテレアポをこなし、初受注へつなげた新人時代
勤めた企業が提供している求人情報サービスは、中途採用向けの転職メディアが有名で、もともとはエンジニア採用を目的に作られた情報誌が出発点。
内容は技術者向けのものに特化されているので、エンジニアと一言でいっても細分化されており、入社直後の新人はその違いを学ぶことから求められました。
たとえばIT系のシステム開発というジャンルでも
・大掛かりな銀行システムを創り上げる汎用系エンジニア
・インターネット技術でシステムを作り出すWeb系エンジニア
・システム構成やネットワーク・ルータ・サーバを創り上げるインフラ系エンジニア
・IoTのような小型デバイスを動かすためのシステムをつくる組み込み系エンジニア
まで多岐にわたります。
その他にも建築・土木・工場系で、エンジニアと呼ばれる仕事がたくさんあり、すべて把握するには、かなりの経験と蓄積が必要。この仕事に就いたばかりの新人がお客様にアポ取りする訳ですから、知識の浅さを見透かされ商談に至らず、悔しい思いをすることも多々ありました。
2018年前半は、ITに対する投資が社会的に活発。ちょうどソーシャルクラウドなどインフラ系技術を導入する企業も多く、「自社内システム開発エンジニアを採用したいんだけど」といった思わぬニーズに出会うこともあり、商談のしやすい時期でした。
こうしてテレアポを重ねることおよそ1年、5社の企業と商談に結び付きました。
初受注は文京区にある格安旅行代理店から頂いたお仕事でした。主に福利厚生の一環で国内の社員旅行を考えているお客様に対して、団体旅行パッケージを提案するための法人営業を探しておられました。
最初は社内システムのエンジニア採用でアプローチしましたが、人事担当の方から「今じゃないんだよね。そのかわり営業職なら探しているんだけど」と告げられました。
営業職向けの企画書を持参しあらためてプレゼン。その後取り扱っている中途採用向けメディアのなかでは一番大きな広告スペースを、上司のサポートもあって受注できました。2018年8月末のことです。
正直エンジニア採用とはまったく畑違いの商談でしたが、受注できてとても嬉しかった。
「また次の採用の時もぜひお願いしますね!」
と、その企業の担当者様からお声をいただけて、信頼関係を築くこともでき、最終的には「エンジニアの人材も採用したい」と営業だけでなくエンジニア職の求人案件も受注できました。
この仕事を通じてお客様との信頼関係構築がいかに大切か。商談で直接顔と顔を突き合わす営業の大事さや醍醐味を知らされました。
この老舗の大手人材系企業は、女性の採用にも強い会社としても知られています。たとえば介護業界や看護師業界などを中心に、女性の仕事がメインのWeb求人サイトがあり、こちらの案内も担当しました。
オーダーをいただいたのが、豊島区池袋に本社を構える化粧品のOEMメーカーさんでした。
受付スタッフの採用が課題で、人材要件として
・化粧品メーカーの勤務経験者
・受付経験のある人
・年齢層は高めで30代後半が望ましい
というオーダーを受けました。理由を聞くと「未経験者の採用は考えていないので、即戦力となる経験者の人材が欲しい」とのこと。
受付スタッフを募集している他の企業では「未経験者でもいいから若い人が欲しい」というオーダーがほとんど。実際に30代後半で受付スタッフの仕事を希望する方も少なかったため難題でした。
20代をターゲットに打ち出していた求人広告を、30代の経験者向けに打ちだす必要があったため、社内にいる制作部門のディレクターにもどのような文章にすべきか相談。
結果お客様にターゲットやペルソナを意識した採用広告を提案でき、なんと希望通りの人材が2名も採用でき、お客様からもお褒めの言葉をいただきました。
導入されたオンライン商談システムに違和感をおぼえ、転職しようと思いました。
新規開拓営業は、テレアポからのニーズの掘り起こしが基本ではありますが、お客様との付き合いが深まることで新しいお客様を紹介してもらえるなど、人と人とのつながりの大切さを実感できる点が魅力でした。
「お客様との初期段階の商談(クロージング前のコミュニケーション)に、オンライン商談システムを活用するように」
ある日突然、通達されました。しかも直属の課長からではなく、さらに上の本部長クラスの方からのオーダー。
いままで当たり前のように行っていた「電話でアポを取り」「直接お伺いして採用ニーズを確認」「求める採用ターゲットに向けた提案」「クロージング」という一連の流れをぶった切るものでした。
またこのシステムにログインするために、4ケタの番号をお客様に教えるというフローがあり、お客様からは
「Webミーティングなんて面倒くさいからもういいよ」
と苦言を受ける始末。
こうして受注確度の高そうな新規クライアントとの付き合いがどんどん減っていきました。
電話してヒヤリングして顔と顔を突き合わせて、本音でぶつかるような営業を標榜してきた自分にとって、あまりにもツラい状況。また上層部のオーダーに疑問を感じず「何がなんでもオンライン商談システムでやれ」と迫ってくる課長にも疑問を感じました。
この営業方針の転換をきっかけに、課長とも折り合いがつかなくなってしまい、転職する決意をしました。入社から1年後の2019年4月のことです。
いざ転職を考えた時に、どんなアプローチでどんな業界・仕事に進むべきなのかを考えました。
某大手人材系企業には営業だけでも700人ほど在籍しており、大所帯ではどんなに成果を出しても埋もれてしまうという経験もしました。
そこで中小企業クラスの規模で、職種的には営業(新規開拓は除外)。勤務地は都内で転勤が無く、土日休みという軸で求人探し。業種的にはあまりこだわりませんでした。
最初はエージェントに頼んで転職活動をはじめましたが、世間からみると1年しか社会人経験を持たない第二新卒者という扱いで、芳しい成果は得られませんでしたが、そのなかで以下の3社が候補に挙がりました。
1. 建築系の会社で、ビル建設施工管理の仕事
2. 国内旅行代理店の法人営業(社内旅行の手配)
3. いま在籍している「株式会社teamgate」でした。
「teamgate」は、建築×ITという切り口で、建設コンサルタントとWeb制作事業を行っている年商20億円規模の会社で、スタートアップに近いイメージでした。
担当してくれていたエージェントの方とteamgateの代表が知り合いだったそうで、直接掛け合ってくれ面談することになりました。
緊張していたのですが、代表の方と出身中学校が同じとわかり、地元の話で大いに盛り上がりました(笑)
そのおかげもあり、リラックスしながら自分のことをしっかりと伝えられました。
前職では、クライアントとの連絡は営業が担当、制作はディレクターが担当だったので、認識のズレが発生してストレスでした。teamgateでは、クライアントへのコンサルティングから広告の作成やライティングまですべて担えるので、前職と比べてより多くの裁量を持って働けると感じました。
転職活動の軸としていた営業職ではありませんでしたが、代表との共通点が多かったことや人と接する仕事をしながら専門性が身につくと思い、入社を決めました。
今までと180度違うWebの仕事だけど、リモートで自由に働けています
任されたミッションは「企業のフランチャイズSNS募集などWebに特化した広告代理店のクリエイティブ」と少々難しく咀嚼しきれませんでしたが、SNSやリスティング広告の運用やバナー作成、記事作成などのライティングという仕事に面白さを感じ、前職を辞めてから半年後の2019年10月teamgateに入社することになりました。
いまの仕事はFacebookを中心としたフランチャイズオーナー募集を主に担当。高齢者向けの宅食を担う加盟店募集や、バーベキュー業者のケータリング事業のための貸出店舗募集のサポートをしています。
また学習塾オーナーの募集・介護業界から看護師に転職を促すサイト誘導といったバナー広告制作も私の仕事。お客様への提案を含め幅広く担当しています。
こういう業界では今般の「コロナ禍」で影響がでないかと心配する方もいますが、最近では街の開業歯科医にノウハウを伝えるDVD(ベテランの歯科医が監修)の拡販の仕事が潤沢にあり、仕事が不足するようなことはなく日々安定的に仕事をしています。
働き方も自由で、リモートでの仕事がOKになり、最近ではこの運用業務を自宅で完結できるようになりました。通勤に費やす時間が軽減でき、好きな時に好きなように働けますし、残業もなく快適。
一番課題を感じている点は自宅です。いま住んでいる部屋は、前職のときから住んでいるワンルーム。当初は寝起きくらいしか使用しない想定だったため、仕事をするのには手狭。今後は引っ越しも選択肢に入れ、自宅を働きやすいワーキングスペースにしたいと思います。
第二新卒という負い目もあったけれど
辛く苦しい求人広告の法人営業からジョブチェンジしましたが、手放しで喜べなかったことも事実。社会人経験1年での転職は、さすがに後ろめたいという気持ちもありました。
それでも嫌なことは嫌だと思う気持ちは、何よりも大切。24歳という若さだったので「なんでもチャレンジできる」という気持ちがあったから転職を決意できたと思います。
取材・執筆:吉村裕之 (@オフィスADON)
編集:chewy編集部 はら
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