これって運命かも?
娘が何年も前から「東京に住みたい」と言っている。
彼女は中学生の頃から不登校になり、一緒に遊ぶ友達は地元にほとんどいない。
そんな娘がジャニーズのアイドルのことを推すようになり、スマホを持つようになったころ、Twitterで推し友ができるようになった。
最初は騙されているんじゃないか、本当に女の子なのか、わたしはとても心配だった。実際に会うと約束していた娘と、心配なあまり過干渉になり喧嘩したこともあった。
その子はとても素敵な女の子で、今でも上京すると一緒に遊んでいる。
そんな推し友が今では何人もいて、ほとんどが関東在住の子たち。
娘は、友達と学校帰りにカフェに行ったり、カラオケに行ったり、お泊りしたり、そんな学生時代の楽しみを地元では経験できなかった。
そして、なにより娘にとって、文化的な格差が地元にいることの苛立ちに繋がっていた。
わたしは地元が大好きで、とくに歳を重ねるにつれ、地元の景色に癒やされてきた。友人もいるし、不自由なことは何もない。
それでも若い頃は、こんな田舎から出たいと思っていたし、オーストラリアに8ヶ月ほど住んでいたが、永住したいと思うくらい充実していた。
たまに東京に遊びに行くと、あまりの違いにワクワクしたが、こんなに人が多い街には住めないと思った。歯みがきをするたび、東京の水の味に慣れなかった。
そんな自分が、少しずつ東京に住みたい気持ちを持つようになった。
バトンズの学校に通い、その想いはどんどん大きくなっていった。
時間ができると賃貸物件サイトを見るのが楽しみになっていた。都内の位置関係がわからないので、路線図を書店で購入して、スマホで駅名、紙で駅を探し場所を把握していった。
昨夜も寝る前にスマホで部屋探し。昔から間取りを見るのが好きなので、もう趣味みたいなものだ。
いつものように気になる間取りの物件を見ていると、場所もいい、家賃もいい物件があった。その物件で目をひいたのは、外国みたいな水色タイルが全面に貼ってあるユニットバス。窓もある。
日当たりもよくて明るい。ベランダから広い空がみえる。
娘に見せるとユニットバスを気に入ったようだった。
娘が小学生のころからお付き合いがある友人は、その地域に住んでいると教えてくれていたので、物件情報のページをコピペして送ってみた。
「うちから数分の場所だよ!」
なんと!それは心強い。
夕方、彼女から動画が何本か送られてきた。
自宅からその物件まで歩いてくれたのだ。街の感じがわかる。落ちついた街だ。子どもの声も聞こえる。緑もある。
2本目の動画には「管理人さんがいたので聞いてみたら、まだ空いてるそうです!」と。
なんと!管理人さんにまでお話をしてくれて、階段を上がって、ここだねって見せてくれて。
掃除が行き届いたきれいなアパートだよ、と。
そこから駅まで歩いてくれて!
もう住んでいるところがイメージできる。図書館の場所も教えてくれた。ライターには必須の場所だ。
これは、
運命なのではないか?
ここにおいでって、
呼んでくれているのか?
近いうちに内見に行こうかな。ドキドキしてきた。