『ほめるってなーんだ?』
最近は(ほめるしつけ)といった言葉を耳にする機会も増えたかと思います
けれど、なんとなく(ほめるって?)と、理解がぼんやりしている方も多いのではないでしょうか。なのでスッキリしていただけるように書いていきます。
①ほめる目的は?
ほめる目的は、ズバリ
「その行動をまたやってほしいから」
この一点ですよね。
例えば「おすわり」と言った後に、犬がお尻を地面につけたから、ほめた
今後も「おすわり」の言葉の後に、またあの形をやってほしいと期待を込めているわけです。
きっかけ→行動→結果 に当てはめると
このような形になります。まず結論から書きますね。
その(ほめる)に効果があるかは
この2点となります
②視点を変える
言葉って難しいなと思うところでもあります
(ほめる)は、人間側の行動ですよね
そして(ほめ方)は主観的で、人によってイメージがバラバラ
いい子ね〜と言葉で褒める人もいれば
頭をグシャグシャと撫でる人もいる
イメージ先行してしまうと、人によって違うとても曖昧なものになる
そうすると
「いくらほめても上手くいかないじゃん!」
みたいな結果が出てくる場合もあるわけです
さて、皆様にはここで180度、視点を変えて頂きます
ほめるは
「ほめる人間が主役ではなく、ほめられる対象(犬)が主役である」
驚きの光景を目にするはずです。
魚に(おりこうだね!)と言葉で褒めて、通じるだろうか
なんだか難しそうですよね
ところが、魚にもトレーニングできるのです。
もちろん魚にできる行動でしか教えることはできませんよ。
しかし原理は、犬・猫・鳥・魚など、みんな同じです。
これは学習の仕組みを理解すると、不思議なことではないのです。
________________
③オペラント条件づけ
とても大事なことを書きます
これを専門用語で
「オペラント条件付け・正の強化」といいます
そして行動が増える要因となるものを「強化子(reinforcer)」といいます
専門用語は置いといて
大事なのは
重要なのはこの部分なのです
________________
人で例えます
「お子さんが、お母さんの皿洗いを手伝った」
すると、お母さんが
(とても喜んだ)または(お小遣いもらえた)
そうすると、お子さんは、またお皿洗いをするようになった
お子さんのお皿を洗う行動が増えた
行動が増えた要因(強化子)となったのが
(お母さんの喜ぶ姿)や(お小遣い)です
さて(ほめる)に話を戻します
学習するのは犬です。
その犬にとって(いいこと)が起きれば、行動が増えます
科学とは、再現性があることです
もっとシンプルで簡単な方法があります
その前に犬でご説明すると、どうしても「心と心で通じ合いたいフィルター」が、掛かりがちになるので
行動分析学の基礎となった、ある研究のお話からします
④スキナーボックス
1930年代、アメリカの心理学者「B.F.スキナー」の研究について
研究用のマウス(ネズミ)を、30cm立方の箱に入れます。
箱の内側には、小さなレバーがついています。
レバーの下には、小さな穴が空いている。
マウスがレバーを前足で押すと、食べ物が出てくる(最初の研究では水)
食べ物が出てくる時には、音がするように工夫されている。
_____________________
マウスは初めのうち、箱の中をウロウロする
偶然にレバーに体重がかかると、音が鳴り、穴から食べ物が出てくる
(ん??)
箱の中をウロウロ
また偶然にレバーを押して、穴から食べ物
(あれ?もしかして??)
#この表現が必要ないのはわかってるごめんなさい
やがてマウスのレバーを押す行動が強化され、頻繁に何度もレバー押しをするようになった
⑤食べものとは
「行動の直後に、いいことが起きるとその行動が増える」
マウスにとって(いいこと)とは、食べ物(水)ゲット!
行動は、レバー押し
だからレバーを押す行動を繰り返すようになった
オペラント条件づけ・正の強化です。
では、なんでマウスにとって「食べもの」は、いいことなの?
そりゃー食べ物は美味しいし、そもそも食べないと生きていけないじゃん・・・
そう!そこなんです!!
ほぼ全ての生き物が、栄養(食べ物)を得ないと生きていけません。
生まれながらにしてプログラムされているのです。
つまり食べ物というのは、誰から教えられなくても
生まれながらにして、それを得ることは「いいこと」になるもの
誰から教えられなくても、いいものになり得るものは他にもあって
など、日光が必要なものいれば、虫とか光の方へ導かれる走性といった行動をするものまで、種によって違いはあれど。
先入観や思い込みのフィルターを外すと、
行動の原理というのは、とてもシンプル
だから二次的に「ほめる」を(いいこと)に昇格させる作業が必要となってきます
________________
ここまでの振り返りとして
『残念ながら、生まれながらにして(いいこと)の中に
「ほめる」は入っていない』
『だから二次的に「ほめる」を(いいこと)に昇格させる作業が必要となってきます』と書きました。
ここからその説明と具体的な手法を書いていきます。
この先は必読です!
⑥お金ってなーに?
いきなりお金の話??
ちょっと聞いてください。
現代社会の一員としてお金を必要としない人は、まず居ないかと思います。
しかし、よーく考えてみると
お金は(ただの紙きれ)であり(鉱物の塊)です。
知らない国のコインをもらっても、どうしたらよいかわからない。
お金自体は、ただの「モノ」
だから赤ちゃんにお札を渡しても、本来の意味は理解しない。
しかし成長するにつれ、お金の意味、つまり価値を学習します。
やがて「お金を得る」ための行動が起きる
⑦パブロフの犬
話は飛びますが
1900年代、ロシアの生理学者「イワン・パブロフ」という研究者の実験。
唾液が出るというのは、自分でコントロールできない反応です。
③を繰り返すことにより、メトロノームの音に条件反射が起きて、食べ物がなくても唾液が出るようになった。
________________
私たち日本人で一番有名なのは、
「梅干しを見たり想像したりするだけで、唾液が出る」
これ自分でコントロールできないのです。
この学習の手続きを「レスポンデント条件づけ(古典的条件づけ)」といいます。
⑧「ほめる」の核心に迫る
さて、ようやく「ほめる」の核心に迫ってきました。
もし愛犬が何かしたときに「ほめた」つもりでも、
犬にとって「知らない国のコイン」をもらった感覚だったらどうなります?
その行動はあまり増えないかもしれない。
そんな誤解を解くもっとシンプルで、わかりやすいものがある。
それが食べ物
つまり「誰から教えられなくても必要なもの」
そして、パブロフの実験。
つまり、メトロノームの代わりになるもの
皆さんの「言葉」でも「ホイッスル」や「クリッカー」と呼ばれる音が出るものを条件づけしていく。
ここでもうひとつ大事な要素があります
⑨即時強化
「行動の直後に、いいことが起きるとその行動が増える」
つまり「望む行動の瞬間をキャッチ」しなければならないのです。
もっと原理的なこというと、行動をした1秒以内に口の中に食べ物が入れば、行動が増える。
犬が目の前にいたら、可能かもしれませんが、まぁ大抵は無理ですよね。
犬がちょっと離れたところにいたら無理だし。
そんな四六時中、食べ物持ち歩いているわけでもない。
だからあらかじめ「ほめ言葉」に条件づけ
つまり言葉に「力」を持たせておくのです。
この手続きを何度も繰り返していきます。
気をつけるポイントは「言葉の直後、1秒以内に食べ物を食べてもらう」
食べ物は、犬が一口で飲み込めるぐらい小さくしたものが適しています。
言葉に力を持たせることにより、行動の瞬間をキャッチすることができ、犬に「何が正解なのか?」をわかりやすく伝える「ルール作り」となります。
________________
さぁ、ここまでお読みいただいてありがとうございました。
なるほど!と思う部分もあれば
ん?と感じるところもあるかと思います。
例えば、
食べ物使ってるけどうまくいかないよー!!とか
ずっと食べ物を使い続けないといけないの?とか
この記事の内容は、あくまでも基本の触りの部分です。
ここからが、すごく奥が深くなっていきます。
そうしたお話を、今後も書いてきますのでお楽しみに。