『ことりのレストラン⑬』
固唾を飲んで待つこと30分。
季節が変わってしまうのではないかと感じるほどに長い時間でした。
「どんな宝物なんだろう」
「宝石とか金貨とか?」
「素敵な絵画かもしれないよ!」
皆の頭の中がパンパンに膨らんでいたその時、宝物を持ってスピンドンさんとペーペチが先頭で現れました。
「みんな、お待たせしました!」
すぐにでも旅立てるように、旅行用のトランクに入れておいたようです。
「これが、宝物です」
スピンドンさんはトランクの鍵を慎重に開けると、中からなにやら四角いものを取り出しました。
それは、一冊の分厚い本でした。
「図鑑?」
「ナニコレ」
きらびやかなモノを想像していた皆は、拍子抜けしたようにわかりやすくがっかりしました。
「これは、『キングのおいしいレシピ』です」
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「それは、どういう」
ポーチクが尋ねました。
「昔、キングと呼ばれる白い鹿がいたと話しましたよね?そのキングはバラバラだった動物たちを束ねて仲良くし、今のこの森を作ったと言われています。どのように仲良くさせたのか。最初わたしは力が一番強かったからキングは森をまとめたのだと思っていたのです。しかし、歴史を詳しく調べてみるとそうではなかったことがわかりました。
その理由というのが、手料理。美味しい料理を作るのが得意だったキングは、次々と動物たちを同じテーブルに招待しご馳走しました。お腹が満たされること、それこそが重要だと考えたキングは、それまでギクシャクしていた動物たちの心をも満たしました。すると自然とお互いを思いやるようになったのです。美味しい料理をみんなで食べる。それこそが森をまとめた最大の方法だとわかったわたしは、このレシピを手に入れて、自分の故郷の動物たちを仲良くさせたいと考えていました。だって、この森の仲間たちは、とても素敵だから。こんな風に私のふるさとの森も、一つにしたいと思ったから」
スピンドンさんは、分厚い本をペーペチに手渡しました。
「これで、ふるさとの森でレストランをオープンしようと思っていました。でも、これはこの森の宝物です。ことりのレストランで持つべきものです。違う森のものが、勝手に持ち出してはいけない神聖なものなのです。わたしがバカでした。本当にごめんなさい」