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『ことりのレストラン⑫』

一斉にタヌキとキツネに目をやりました。
「そう言えばお前さんたち、毎日山をそこいら中掘っているな」
フクロウ爺さんが言いました。
タヌキとキツネはどこか遠くの空中を見ていて、誰とも目を合わせません。
「上から良―く見えとったから知ってはいたが、まさか宝を探している
とは思わなんだ」
と、少し目を離したすきに二匹はどこかに姿を消していました。
いや、もしかしたら何かに変身して近くにいるのかもしれません。

スピンドンさんはがっくり肩を落としていました。
華奢な体が益々細く小さく見えて、弱弱しい小枝のようです。
「煮るなり焼くなり、好きにしてください。わたしはみなさんを裏切ったのですから」
さて、どうしたものでしょう。
森の仲間たちはみな乾杯のボーズのままで、次の行動が頭に思い浮かびません。
スピンドンさんを責めるにしても、そもそも宝物自体を信じていなかったのです。
無いと思っていたものを盗んだと言われてもピンとこないのが実際のところで、それに宝物の価値もよくわかりません。
「もしよかったら、その宝物をここでみんなに見せてくれませんか?」
パーチクは言いました。
「こうして正直に話してくれたわけですし」
ピーチクが言いました。
「物語の話だと思っていたけれど実物があるのなら、見て見たいです!」
プーチクも言いました。
全員が体を揺らして頷きました。目も、ダイヤモンドのように輝いています。
「どうですか?今から僕と取りに行きませんか?」
意を決したように息を深く吸い込んで目を瞑ってから、スピンドンさんはペーペチと一緒に自宅へ宝物を取りに帰りました。

「そっか、宝物が見られるんだね」
「ラッキーだ」
木の上から猿2匹が下りてきました。
「こら、タヌキとキツネ。変身を解いてこっちにいらっしゃい」
溜息をついてから諦めたようにフクロウ爺さんの近くへ猿がゆっくりと歩み寄り、バク宙してから元の姿に戻ったのでした。
「もう勝手に変身しちゃだめ」

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