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『ことりのレストラン⑧』

午後3時が近づくと、続々と森の仲間たちが集まってきました。
「おや、今日は出張レストランだねー。いいねー」
熊さん親子がスキップしながらやってきました。
「湖がピンク色で春らしいねえ」
せっかく飾り付けをした色とりどりの花が嵐で吹き飛ばされてしまった
鹿さんたちでしたが、自分たちが持ってきたお花もちゃんと湖に桜と一緒に
敷き詰められていて満足しているようでした。
「湖のほとりで演奏できるなんて、世界中に響き渡りそうでワクワクするよ」
ウサギさんとリスさんの音楽隊は楽器を手に腕を回していました。
「ここなら大きなモノに変身できそうだね」
タヌキさんとキツネさんも飛び跳ねながら湖を見つめました。

「パーチク、諦めずによく機転を利かせて湖でパーティーを開催することを
実行したね」
フクロウ爺さんはヨタヨタ歩きながら出張レストランを見渡しました。
「いえ。フクロウ爺さんが気づかせてくれたからです。
そしてまだまだ小さい子供だと思っていた末っ子のペーペチが、湖を提案してくれました。本当に感動です」
パーチクの目にはうっすらと涙が光りました。
「おやおや、まだ泣くには早いぞ。スピンドンさんのサヨナラパーティーを
成功させなくちゃな!がんばろう!」
小鳥の兄弟たちは、小さな羽をばたつかせて、呼吸をするのも忘れるほどに
料理を作り始めました。
楽しいことをしようとすると、なんと時間の過ぎるのが早いことでしょう。
あっという間に時刻は午後5時に近づこうとしています。

「ペーペチ、そろそろスピンドンさんを呼んできてくれるかい?」

緊張気味のペーペチを、森の仲間が優しく見送ります。
「それじゃあ、行ってくるね!」

時計の針は、午後4時45分です。

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