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2種類の すぐき を同時に食べた。


いや〜、やっとね、八隈農園さんのこの時期の「新漬けすぐき」を食べることができました。嬉しいな。

なぜなら、こちらの記事でずっと気になっていたから。

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すぐきって、ウィキペディアにはこう書かれてます。
「すぐき、または酸茎漬けは、京都市の伝統的な漬物の一種。カブの変種である酸茎菜の葉とかぶらを原材料とする。現代の日本では数の少ない本格的な乳酸発酵漬物で、澄んだ酸味が特徴である。「柴漬」、「千枚漬け」と合わせて京都の三大漬物と呼ばれている。」〜 ウィキペディア〜

でも実際、「すぐき」には2種類あるという風に私は認識していて、

・時候慣れ ・・・冬に漬け込んでそのまま時間をかけて発酵させて、それを夏以降に食べる。

・新漬け ・・・冬に漬け込んで40度くらいの室に1週間ほど入れて発酵を促して室から出して2週間ほどで食べる。

で、昨年「なり田」の時候慣れを食べて、今年は八隈農園さんの新漬けを食べられたというわけ。で、なぜか時候慣れもまだ冷蔵庫に眠っていたから、両方切って食べた。

いざ、食べ比べ

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左が八隈農園の新漬け。右が時候慣れ、冷蔵庫熟成。
ちなみに、時候慣れは昨年9月賞味期限というやばい奴だったけど、空気抜いていたから全く問題なし。ちゃんと乳酸発酵させたものは、空気さえ抜いて入れば大丈夫。とはいえ、自己責任で。

これね、食べ比べ、めちゃくちゃオモロい。

新漬けは、見た目も綺麗で、切ると中心がピンク(袋しぼりの大吟醸酒粕を少し熟成させた時の、あのピンク色を思い出すね)。ちょっと硬めの桃みたいな果実感と香り、フレッシュなカブの甘み。まろやかな酸味で、とても食べやすい。お茶受けに最高。

時候慣れは、少し刺激的な酸味とずっと噛んでいたくなる旨味が豊富で、おーい、酒と飯もってこい!という感じ。長期冷蔵庫熟成で多少色が変化しているけど、味の方向性は昨年の印象とそれほど変わらなかったよ。


これらの味の違いは、私が舌の感覚や主観で感じるところでは、その漬物の味を作る上での、菌の構成や種類数が違う。

新漬けは、40度くらいの室でまず何らかの乳酸菌を一気に優位に持っていく。結果、複雑味にはかけるかもしれないが、綺麗な味を構成できるのではと思う。(これは、現在の鮒寿司作りが夏に行われるのと共通の考えではないかと考える。)

一方、時候慣れは、気温任せなので、その時その時で活躍する菌があり、時間をかけた遷移の末、何らかの乳酸菌が優位になると思われる。

おそらく、新漬けも冷蔵庫でずーっと眠らせておいたり、空気を抜いて常温で置いておいたら、複雑味が増すとは思います。

乳酸菌の話題。

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漬物食べながら、論文読むのが、たまらないんだな。

すぐきの乳酸菌として有名な「ラブレ菌」に関しての読み物が日本醸造協会誌2020年9月号に載ってる。「植物性発酵食品由来の乳酸菌 Lactbacillus brevis KB290 の健康効果」
ここにラブレ菌(ラクトバチルス ブレビス)の免疫活性効果、整腸作用についての研究が紹介されており、面白い。

ちなみに、注意しておきたいのは、漬物桶の中では、多かれ少なかれ多様性のある世界が実現されているもので、たった1つの菌だけが活躍したと考えない方が良いでしょうね。

ラブレ菌は乳酸菌の桿菌であり、漬物系は球菌→桿菌の遷移があるのが通例です。また、漬物は乳酸菌のみでできているわけではなく、乳酸菌が活躍しやすい環境を整える、別の菌も初期にいた可能性がある。

「すぐきから発見されたラブレ菌」なんて言われ方しますが、「すぐき漬けの、どの工程での試料の採取から発見されたのでしょう」という疑問が、必要ですよ、ということです。

でも、もちろん、すぐきの新漬けのように加温する漬物では、一気にラブレ菌が優位になっている可能性もあるわけで。どうなんでしょうね、そこらへん。

鮒寿司に関してもそうですが、漬物桶内の菌の遷移については、研究し尽くせていないのが現状なので、これからのさらなる研究が期待されますね。


白味噌との共通性


で、思ったのは、新漬けのすぐきと、京都の白味噌って共通点があるということ。
新漬けのすぐきを室で加温するのと同じように、京都の白味噌も仕込んで加温して糀の甘みを引き出しから冷却して、若い味を楽しむ。
白味噌って、シンプルながらも、まろやかで甘くて、極めて上品。見た目も美しい。京風のお雑煮にはなくてはならないですね。金時人参と合わせたら紅白で、もう華やかですよねえ。

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京都人って、基本的にはまろやかで華やかで上品な美しい味がお好きなんやなあ。そういや、

はんなり

って京言葉がありましたな。ウィキペディアによると
「上品で落ち着きがあり、明るさ、華やかさ、陽気さも併せ持つさま」だそうな。

なるほど。そんな気がする。


一方、時候慣れの、気温任せのすぐきは、どちらかというと「農家の味」の力強さ。
こちらの方が酸味が強くスッキリして、栄養も豊富そうで、夏バテ防止には効き目がありそう!


どちらにせよ、すぐき、美味しいね。ぜひ皆さんもすぐき食べながら、発酵に想いをはせてくださいな。

読んでいただきありがとうございました♪

*私はすぐきの専門家ではありませんので、間違いなどありましたらご指摘ください。対応させていただきます。

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