敗戦真相記
この本を見つけたのは、偶然でした。もともと、ファイブスター物語のマンガに電子書籍版はないかなぁ~と著者名の「永野護」で検索したところ・・同姓同名の永野護氏による『敗戦真相記』の電子書籍が出てきたのです。
なんと、敗戦直後の昭和20年9月の講演をまとめたもの。実際に読んでみると、簡潔かつ的確な分析に驚かざるを得ません。
↓↓いくつか抜粋してみます↓↓
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日本の国の利益のみを目的とせる自給自足主義を大東亜共栄圏建設の名前で強行したということが、今度の戦争が起こった根本的な原因だと考えます。
いわゆる五・一五事件、二・二六事件以後には、従来日本の指導的立場にあった上層階級のいわゆる穏健派の人々は全く口を封ぜられてしまい、(中略)また、社会の木鐸と自任する新聞、雑誌も戦争に対する一切の主張を封じられてしまったのであります。
科学兵器の差というものは目に見えるから皆納得するが、目に見えないで、もっと戦局に影響を及ぼしたものはマネージメントの差です。残念ながら我が方は、いわゆる科学的マネージメントというものが、ほとんどゼロに等しかった。
陸海軍の不一致ということは、科学能力の劣弱性に匹敵すべき戦争の致命的敗因です。
占領地区の防備にしましても、ここは陸軍地区、あそこは海軍地区というような、まるで各国の連合軍が領土を取ったような観念です。
また、小さい例は同じ用途のネジをつくるにしても、陸軍が右ネジにすれば、海軍は左ネジにするというようなことをする。すなわち、どんな部分品でも、陸軍の物は海軍では使えない。海軍の物は陸軍では使えないようになっていた。
こんな風にして、日本は敗けたのです。この全体を覆う色彩は、自国中心の思い上がりと、生産と組織に対する非科学性です。
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↑↑(抜粋ここまで)↑↑
そして恐るべきことに、敗戦から74年たった今でも【この全体を覆う色彩】が薄まるどころか、先祖返りのように色濃くなっている気配がします。
科学的マネージメントの欠如については、中央政府や自治体だけでなく、残念ながら民間企業も例外とは言えません。。
また、日本人は情緒的で、理性的な分析が苦手と言われることがあります。しかし、敗戦直後に永野護氏の『敗戦真相記』のような優れた書物が出版されているのを見ると、襟を正す思いです。
今の日本は人口減少など、未来への明るい展望を描きにくい状況にあります。されど、日本が一度はどのように亡国へと向かったのか知っている、というのは、現代に生きる我々の強みです。
一人ひとりにできる事はあまりに小さくて、ゼロに近いと思う日もあるけれど。それでも、あなたも私も今日までどうにか生きてきたし。かつては、一人ひとりの力の積み重ねで、復興を成しとげてきたんですよね。
できない理由を挙げたらキリがないけど、できる理由も十分にあると思う、敗戦の日でした。