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相手を正すのではなく、相手の大事な存在になる

はじめに

こんにちは、皆さん。ビジネスの世界で、不義理な取引先にどう対処するか悩んだことはありませんか?今回は、取引先との関係において、相手を正すことよりも、自分が相手にとって大事な存在になることがいかに有効かについてお話しします。

毎回のことながら、自己紹介しておきます。マーケティングコンサルタントとして、企業の経営やマーケティング(広告というよりは経営戦略におけるマーケティング)に関する提案、実行支援を10年以上やっています。クライアントは幅がかなり広いのですが、比較的大きめの企業が多いのが特徴です。なので、お店のマーケティングといったサイズよりも、「企業の経営戦略に基づきマーケティング組織の統合」とか、」パーパスを軸に統合報告書から個別マーケティング施策まで一貫したメッセージを発信するための方法提案」とか、そういう話が多いです。

では、本題に入ります。


相談事例

ある経営者から相談を受けました。取引先が当初の取引内容を変更し、100万円の受注が実際には200万円だったという話です。取引先は当初、100万円で案件を取ってくると言っていましたが、実際には200万円で取っていて、その事実を彼には内緒にしていました。彼は50万円で仕事をしていて、取引先は150万円を儲けていたのです。このことを知った彼は怒り、信頼を裏切られたと感じました。

最初、彼はそのことを正直に間違っていると伝えようとしていたので、私がストップをかけました。

「間違っているという気持ちはわかります。そして、それを伝えて正したい気持ちもわかります。しかし、ここで正すような情報を与えた場合、相手はどのような気持ちになり、次にどのようなアクションを取ると考えますか?」と聞きました。

彼は「話し合えば、わかるはずだ!」と言いましたが、私は「いやいや、そんなことはなく、たぶんあなたとの取引に消極的になり、このビジネスの商流が消えてしまう可能性もありますよ」とサジェストしました。

「じゃあ、どうすればいいの?」というので、私は「大事なことは相手にとって自分が重要な存在になることです。もしこのビジネスが非常に重要で、先方にとっても重要な収益源になったり、仕事をすることの意義を見出すようになると、不義理はしづらくなります。大事な彼女ができたら浮気しないけど、大事じゃなくなると浮気してもいいやと人は考えます。大事なことは相手にとって自分が重要な存在になるためには何が必要か?という問いです。」とアドバイスしました。

そのうえで「今後はどうしたいですか?もし仮に関係性を断っても良いから、ここは信念として通したいということであれば、正直に話すのも一つですよ?」と聞いたところ、「いや、彼とのビジネスは重要だし、今の会社のタイミングでは外せないし、何よりも彼は友人でもあるのでビジネスを続けたい」という回答がありました。

なので、「そうなると、関係を断たないで、仕事でも良い関係になることが重要ですね」と伝え、彼は正しいを通すのではなく、自分のビジネスを成長させることで、関係性の改善を図りました。結果的にビジネスは伸びていき、今回のようなことは起きなくなり、事業も大きくなってから「あのとき、ちょろまかしたでしょ?」とそのビジネスパートナーに伝えたそうです。すると、お互い重要な存在になっているので、素直に謝ってもらえて、そこで手打ちとなったようでした。

なぜ人は正しさを押し付けるのか?自己正当化の心理と認知的不協和

自己正当化の心理

人は自分の行動や考えが正しいと思いたい傾向があります。これは自己正当化の心理と呼ばれ、自己評価を高め、自己肯定感を保つための自然な反応です。自分の行動が間違っていると認めることは、自尊心を傷つけることになるため、多くの人は自分の行動を正当化しようとします。

認知的不協和

認知的不協和理論によれば、人は自身の信念と矛盾する情報に直面すると、不快感を覚えます。これを避けるために、他人を自分の信念に合わせようとする行動が生じます。自分の考えが正しいと確信することで、内面的な不安を軽減しようとするのです。

自分が正しいと思うことのデメリット

対立と摩擦の増加

自分の正しさを主張しすぎると、対立や摩擦が生じやすくなります。相手が自分の意見を受け入れなければ、関係が悪化する可能性があります。これにより、ビジネスの進行が妨げられることがあります。

信頼関係の損失

相手に自分の正しさを押し付けると、相手の意見や感情を無視してしまうことになります。これにより、信頼関係が損なわれ、協力的な関係を築くことが難しくなります。信頼が失われると、長期的なビジネス関係の維持が難しくなります。

解決策の多様性を失う

すべての問題に対して自分の正しさを主張すると、他の解決策や視点を見逃してしまうことがあります。多様な意見を取り入れることで、より効果的な解決策が見つかる可能性が高まります。これにより、ビジネスの成果が向上することがあります。

コーチングの観点から見た人間心理

コーチングの研究によれば、自己認識や自己調整を促進し、行動変容をサポートすることが強調されています。心理学的なアプローチを取り入れたコーチングは、クライアントの内面を理解し、共感を持って接することで、クライアントの成長を促します。特に、正しさを押し付けるのではなく、クライアントの自己認識を高めることで、信頼関係が確立され、満足度やパフォーマンスが向上することが多いとされています【356†source】。

「人は自分の好きなことしかしない」という現象

大企業での観察

大企業で仕事をしていると、優秀な人材が多く、処理能力も高いですが、自分の担当領域から出ない、自分のわかる範囲の仕事しかしないという現象にしばしば遭遇します。例えば、目標としてリード獲得が設定されると、マーケティング全体の戦略を見ずに、自分の担当リードを増やすことだけに注力してしまうことがあります。

広い視野を持たない結果

この現象の背景には、「人は自分の好きなことしかしない」という心理があります。自分の領域内での評価を重視し、広く重要な施策に目を向けないことが多いのです。このような状況では、強制的に仕事をさせても効果は期待できません。本人がやりたい、やらなければならないと感じることが重要です。

解決策:啓蒙活動と仕組みづくり

啓蒙活動

まずは、なぜ広い視野を持つことが重要なのかを理解してもらうための啓蒙活動が必要です。たとえば、ブランディングの重要性を理解してもらい、その活動が自分の評価にもつながることを示します。

仕組みづくり

利他的に会社全体の利益を考えてもらうためには、本人の心的安全性を確保することが重要です。自分がいつ責められるかわからない環境では、相手のことより自分の安全を考えてしまうため、心的安全性を高める仕組みづくりが必要です。

まとめ

職場において、正しさを押し付けることは対立や摩擦を生じさせ、信頼関係を損なうリスクがあります。また、人は自分の好きなことしかしない傾向があり、広い視野を持たせるためには啓蒙活動と仕組みづくりが重要です。経営者やマネジメント層の皆さん、ぜひこのアプローチを実践し、組織の調和と効率を高めていきましょう。

具体例の要約と教訓

今回の事例では、取引先との不義理な取引に対する対応策として、相手を正すのではなく、自分が相手にとって重要な存在になることの重要性を強調しました。最終的に、ビジネスを成長させることで関係性の改善が図られ、双方にとって有益な結果が得られました。この教訓を踏まえ、ビジネス関係においては、相手にとっての価値を提供することが長期的な成功につながることを忘れないでください。

さらなる実践のためのアドバイス

  1. 自己認識を高める: 自分の行動や考え方がどのように相手に影響を与えるかを常に意識しましょう。自己認識を高めることで、相手に対する適切な対応が見えてきます。

  2. 共感と理解を持つ: 相手の立場や感情に共感し、理解することで、信頼関係を築くことができます。相手のニーズや価値観を尊重することが大切です。

  3. 多様な意見を受け入れる: 自分の考えが正しいと主張するのではなく、多様な意見を受け入れる姿勢を持ちましょう。これにより、より効果的な解決策を見つけることができます。

  4. 啓蒙活動を積極的に行う: 組織内で広い視野を持つことの重要性を啓蒙し、全体の利益を考える文化を育てましょう。これにより、個々のメンバーがより広い視点で行動するようになります。

  5. 心的安全性を確保する: 組織内での心的安全性を高めるための仕組みを作りましょう。メンバーが安心して意見を言える環境を整えることで、より健全なコミュニケーションが促進されます。

結論

経営者やマネジメント層として、取引先や社員との関係において、相手を正すことに固執するのではなく、相手にとって重要な存在になることを目指すことが大切です。これにより、信頼関係が強化され、ビジネスの成功に繋がることを実感できるでしょう。ぜひ、今回の教訓を実践し、より良いビジネス環境を築いてください。

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