大人に読んでほしい本~10代から知っておきたい女性を閉じ込める「ずるい言葉」森山至貴著
私のこと
大学入学を機に上京するまでは、実家で暮らしていた。
昭和ヒトケタ生まれの両親と、祖母、5歳上の兄の5人。
兄も大学入学を機に家を出たので、一緒に暮らしたのは13まで。
母は時代や生まれのせいもあり、全く悪気なく男女差別を行う人間で、それは兄と私の関係でもいろんな影響を与えた。
たとえば、大学生の兄が帰省してくると、母にとっては、一大事で、兄の希望がほぼ最優先されていた。
夜兄がタバコがないというと、私はテレビをみていたり、勉強したりしているのを中断させられて、よく買いに行かされた。なぜ自分がと思いつつ、反論は思いつかないというか、何度か試みても、おにいちゃんはずっとはいないんだから、と聞いてもらえなかった。
(ちなみに兄のお客様扱いはその後何十年も続き、とても大きな影響を家族に与えるが、それはまた別の話。)
上京して大学を出た私は、アパレルの会社に就職した。その会社は海外のブランドの日本法人ということで、大きな企業からそのために分社したようなところで、100人足らずの小さい企業だった。
社長が趣味で作ったような雰囲気もあり、若い社員が多く、40代以上は数えるほどしかいなかったが、そのうち女性は一人。女性の役職者は誰もいなかった。
アパレルに応募したのは、PCが普及する前の時代で(笑)、事務職は無理と思ったのと、給与に男女差別がなく、一人暮らしができるだけの給与がもらえたからである。
男女雇用機会均等法の施行後ではあるが、当時はまだ、自宅から通勤しないと女子は採用しない会社もたくさんあったり、応募すらできないことも多かった時代だった。
実際、入社してみると、まず結婚して働いている女性が皆無だった。(その後出てきたけれど)当然ながら、出産して働いている人もいない。
社内恋愛も多かったので、結婚したら女性が退職する風潮がまだまだ多く、唯一40代以上で働いている女性については、彼女のようになりたくないというイメージがついていて、働く女性のロールモデルは全くなかった。
同じ店舗に同期の女性は4人いたが、そのうち1人は、お昼に買うパンを同じチームの人の分まで買いに行っていた。当初はついでに買ってきてあげていたのが、本人が食べない日まで買ってくるのが当然のようになっていた。彼女の部署は女性が最初は彼女だけだったことは無縁ではないだろう。
そんなことはしなくていいのではと話したが、「だいじょうぶだからいいのよ」と言って、毎日自分が食べないパンを買っていた。
彼女の評価は「気が利いてかわいい」
社内恋愛をして、同期で一番最初に寿退職をした。
自分自身ももともとずっと働くつもりがなかったのだけれど、このままずっと働いていくと、店舗の事務所か本社で働く、避けていた事務職の未来しかなく、しかもそれがあまり楽しそうにはどうしても思えず、最低3年と思っていた3年間が過ぎたところで、退職した。
その後は本当にいろいろな職場にいったり、いろいろな人とあったけれど、もやもやしたり、なんだかな~と思うことは数知れず、女性だからというだけではないけれど、女性だからということもやはり多かった。
本のこと
10代から知っておきたい 女性を閉じこめる「ずるい言葉」|WAVE出版 (wave-publishers.co.jp)
画像の帯にあるように、女性だからという理由で、「押しつけや軽視がひそむ言葉に傷つけられないために」若い人に向けてかかれているのだけれど、このひそむという言葉が絶妙で、なんだかわからないけど変な気がする、もやもやする理由を解き明かしてくれる。
今でこそ、経験も積み、知識もあって、若い頃に比べれば、何が起きていて、どうして自分が違和感を持つのかある程度は説明ができるが、それでも、よくわからない部分や気づかなかった部分を説明してもらえてはっとすることが多かった。
素晴らしいのは同時に、具体的な対処も乗っていることで、説明だけではない、現実的な対応は本当に「傷つけられないために」必要だと思う。
そして、この本はそういった「ずるい言葉」から身を守る本であると同時に、「相手を傷つけないため」の本でもあるのだ。
この本を読んでいると、「公正(フェア)」ということに重きを置いている自分でも、無意識にやってしまいそうな発言も出ている。
そして、なぜそれをしてしまうのかも教えてくれるのだ。
作者の森山至貴さんは大学で社会学を教えているということだが、男性である。
自らがむしろ、「ずるい言葉」を言ってしまいがちな側に立つ人間であるということを踏まえ、これまでにしてしまった言葉も含めて、真摯に向き合っているのがよく伝わってくる。
この本はシリーズの2冊目で1冊目は女性と特定していない。
10代から知っておきたい あなたを閉じこめる「ずるい言葉」|WAVE出版 (wave-publishers.co.jp)
ぜひ2冊合わせて、大人に読んでほしい。
これからあなたと出会う人たちのために。
そして、これまでたくさん傷ついたあなた自身のために。