思いがけない未来
キャリアの仕事を始めた最初の頃は大学生や若者に話をすることが、今にして思えば多かった。
まだ大学にキャリアコンサルタントが常駐していない頃で、どこも黎明期。
厚労省もキャリアコンサルタントをどう活用するのかというので、いろんなモデル事業をしていた頃である。
最初の数年、セミナーなどで話をするときによく使っていたのが、
「〇年前の自分に、今こんな風な仕事をしていると話しても信じないと思う」というフレーズ。
当初は5年前、少し時間が経ってからは10年前で話していた。
20年以上たってしまった今では少し意味合いが違ってくるので、あまり使わなくなったけれど。
これは本当にそうで、人の話を聴く人になりたい、という想いはあったけれど、講師の仕事は想定していなかったし、そもそもキャリアの仕事もしようとしてなったものではなかった。
カウンセラーになりたいと言っても、日本でそれで食べていくのは本当に狭き門で、しかも臨床心理士ですらなかったので、医療系に行くこともできない。
持っていた産業カウンセラーと言う資格で職につける日が来るなんて考えたこともなかった。
唯一相談業務で食べていくというのが可能なのが、仕事に関する相談で、そのころ入ってきたキャリアコンサルタントの概念とたまたま重なったというところだろうか。
個人の相談業務の延長で、勉強のつもりでセミナーのアシスタントをするつもりのはずが、なぜか200人の大学生の前で話すというのが私の講師デビューである💦
マイクを持って、講堂を走り回ったのが一番印象に残っている。
いずれにしても、大学生の時の私は、自分が一生働くのかどうかすら、考えていなかった。
時代も専門職か公務員でもない限り、女性が仕事を続けるのは、当たり前ではなくて、特別な時代だった。
そんな中で、仕事やキャリアについて自分が人に話すようになるんだよっとあの時の自分に伝えたとしても、きょとんとして、目を丸くする姿が容易に想像できる。
それが今や、私の人生において、働くことについて考えることはなくてはならないものになっている。
キャリアを構築するなどと言っても、実際の人生はそんなもの。
思うようになんてならない。
思うようになるというのは、
むしろ傲慢だとさえ、この年になると思う。
そして思うようにならないからこそ、
自分の予想を超えた未来が広がることもある。
思い通りの未来の達成感もあれば、
想いを超えた未来の楽しさもある。
そしてたぶん思いがけない未来のほうが、自分ひとりの計画よりも、もっともっと広がりがあって楽しいような気がするのだ。
もしまた大学生と話すなら、そんな話をしたいなと思う、今の私である。