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上質なグループセラピー~リゾのビッグスター発掘~

オーディション番組が好きだ。
それぞれがトップを目指して勝ち抜いていく。

昭和の時代だったら、「スター誕生」
平成だったら、ハロープロジェクトのオーディション番組などは見ていた。

最近はアマゾンプライムのリアリティ番組が多い。「メイキング ザ カット~世界的デザイナーを目指して~」や「ママハディットのモデル養成プロジェクト」、日本版も出来た「ブリティッシュベイクオフ」などもそうだ。

リゾのビッグスター発掘」もこれらと同じ造りで、歌手のリゾが自分のバックダンサーグループのメンバーを増やすため、オーディションを8週に渡って、進めていく。

音楽業界にはとても疎いので、リゾのことは今回までまったく知らなったのだけれど、黒人の女性歌手であると同時にプラスサイズの女性のアイコンでもある。加えてLGBTQのアイコンでもあるようだ。

彼女のバックダンサーのグループ名はその名も「ビッグガール」
全米から13人のプラスサイズのトランスジェンダーを含む女性が集まり、ビッグガールの座を求めて、踊っていく。

この番組が他の番組と少し違うところは、「メイキング ザ カッツ」にしても「ベイキング オフ」にしても、問われるのは、技術なのだけれど、リゾはダンサーとしての能力だけではなく、他のメンバーとトラブルなくすごす能力や、かつての自分が感じていたようなトラウマや世間の批判を乗り越え、自分自身を受け入れ、愛することをも求める。彼女が求めるビッグガールは、そういった存在なのだ。

他の番組との違いはもう一つあって、他の番組は一位になることを目指していくが、「ビッグガール」の枠は一人ではなく、10人分あり、本人のコンディションさえ整っていれば、最初の関門さえクリアすれば、可能性は全員にある。他の人と競う必要はない。ただし、準備ができていなければ、枠があっても踊ることはできない。
あくまでも他者ではなく、自分との闘いになってくるのだ。

番組の中でダンスのためとして行われるレッスンはそのまま、自分自身を開放し、トラウマを乗り越え、自分を赦し、受け入れ、愛するセラピーの過程そのものだ。

全員がプラスサイズであり、大半が黒人、他にもハーフだったり、トランスジェンダーだったりと、他者から心無い言葉を受ける要因が嫌というほどそろっている。

年齢や経験は様々だが、ダンスが好きで、トラウマを戦ってきた、もしくはいまだに戦っているという共通の経験を持ったメンバーがそれぞれオーディションを通して、気持ちを分かち合いながら、次の自分へと踏み出していく姿は、どんなセラピーもかなわないだろうと思う。

自分と同じような人はいないと孤独の中で過ごしていたそれぞれのメンバーは、みかけは全く異なるけれど、同じようにつらい体験をしてきた仲間と一緒に夢に向かって、彼女たちは進んでいく。

その夢の象徴となるリゾは、厳しい判断を下すこともあるが、自分と同じようにつらい思いをしている彼女たちの成長を願い、心から寄り添い、とことん優しい。

派手な外見も含め、苦難を乗り越えた先のロールモデル、あこがれの存在であるが、ともすれば教祖のようでもあり、冷静な分析と心からのやさしさが同居する様は、上質なカウンセラーのようでもある。

8週分のうち、今のところ6週までみており、いよいよこれからが山場である。

いつものオーディション番組の楽しさに加え、心理的な側面の興味も加わり、あと2週見るのが楽しみだけれど、終わるのが残念なような、ちょっと複雑な心境で、楽しんでいるところである。


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