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私だけのダサかわいい

 旅のマイルールは、旅する人の数だけあると思う。快適に過ごすためのグッズを絶対に持参する、必ずここには行くなど、それぞれこだわりがあるだろう。私にもある。それは自分のお土産にダサかわいいキーホルダーを買うことだ。これがかなり難しい。
 そもそも、お土産屋さんでの雑貨の扱いはとても小さい。浅草の仲見世のような観光地化した商店街や駅ナカの大きな店でないと多数置いていない。ひなびた雰囲気の店ならあるのでは?と思うかもしれないが、甘い。そのような店こそ、ご当地キャラや人気キャラのご当地バージョンばかり。大きな店に行った方が扱っている数が多いので、ダサかわいいキーホルダーが紛れ込んでいる確率が高いのだ。
 更に雑貨は商品の入れ替わりが早い。以前小田原で、ピンクのかまぼこのキーホルダーがあった。かまぼこだけの潔さと訳の分からなさに心を奪われたのだが、それゆえ、怯んで買わずに帰ってきてしまった。だが忘れられない。思いが募る日々。次は絶対に買うと意気込んで再び行ったのだが既に無く、かまぼこには猫が付いていた。
 違う、これじゃない。これは求めているダサかわいいではない。何故あの時買わなかったのだ!悔やんでも悔やみきれず、キーホルダーがぶら下がる什器を空しく何度も何度も回し続けた。これを機に私は「迷うな、買え!」を鉄則にした。

 そんな難関を潜り抜け、我が家にやってきたコレクションの一部を紹介しよう。まずは広島で買った、もみじ饅頭のキーホルダー。茶色いもみじ饅頭の一部が欠けていて、押すと黒いあんこが出てくる仕掛け。垢ぬけなさがとても良い。勝浦で買った金目鯛の干物の根付は、とてもリアルでピンクの皮の所々に茶色い焦げ目がある。少しもかわいくなく、ただダサいのにツボを押され買った。それから新橋で買ったゆりかもめのキャラクター。「ゆりも」と言って私好みのかわいさなのだが、全く知名度がない。買う人もほぼいないようで、販売している駅の窓口で、駅員さんが戸惑っていたのは良い思い出だ。
 あと、清里でかった緑色のテディベアに、箱根で買った黒猫。どちらもぬいぐるみでかわいい。山梨の信玄餅に、鎌倉の鳩サブレーは、いずれもミニチュアがぶらさがっていて、とてもかわいい。
 振り返ってみると、単にかわいいもの集めているだけと気がついた。ダサかわいいを求めているはずなのだが、途中で見つけたかわいくってグッと来たものを買ってしまっているのだ。しかし、それも良い。旅のマイルールは私による、私のためのもの。私のために変更だってするし、破りもする。結局楽しいのが一番なのだ。
 だがこれからも、ダサかわいいキーホルダーは探していく。このルールは、もう外せない楽しいイベントになっているからだ。私は次の旅先で、ダサかわいい発掘隊に変身するのが待ち遠しくて仕方ないのだ。

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