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羽尾万里子(はおまりこ)
2024年5月31日 17:51
人に話したら笑われそうな、それでも、今も時折蘇っては胸を締め付けられる記憶がある。小学校低学年の頃だったと思う。自宅でピアノ教室を営む先生のマンションから、レッスン後の帰り道。あたりは暮れかかり、オレンジ色の光に満ちていた。マンション前の急な坂道を、母に手を引かれながらゆっくり下っていく。滑り止めの為らしい坂一面の円状のくぼみは逆に幼児には歩きづらく、つまずかないよう自然足元ばかりを見つ