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ヤナイユキコ
2024年3月22日 07:53
時が経ちすぎたのもあって、未だにあれは現実に起きたことなのか、それとも妄想の類いだったのか、曖昧な記憶がある。私ひとりでは到底入る機会もない、仄暗いラウンジバーだった。鼈甲色にぼんやり灯る照明は、近距離でしか表情が読み取れないほどに心許ない。あまり周囲に顔を見られたくない人たちにとっては都合のいい明るさなのだろう。お忍び向き、ひと言で言えば、そんな店だった。好きになるのは初