休日のあるべき姿と変革のシナリオ
松下幸之助 一日一話
10月 6日 休日の裏づけ
文化的で繁栄した生活を営むのは、人みなの願いです。わが国でも、最近、休日を増やすということが話題に上がっていますが、休日を単に怠けた姿としてではなく、積極的に生活を楽しむというように考えてきつつあるのは、一つの進んだ姿として、好ましいことだと思います。
しかし、ただ単に休みを多くするというだけで、そこに生産の高まりという裏づけがなかったならば、お互いの収入は減るばかりで、かえって生活の程度は下がってしまうでしょう。原始の時代から、お互いに人間は、生産の高まりとともに生活を高め、しかも休息と慰安の時間を次第に多くしてきたのです。それが社会発展の一つの姿と言えるのです。
https://www.panasonic.com/jp/corporate/history/founders-quotes.html より
欧米においての休日に対する考え方は、あくまでも労働に対する対価であり、労働量に比例した休日量を確保するのが当然と認識されているところがあります。昨今の日本においても、そのような欧米からの潮流は強くなる一方ですが、良い悪いは別として働き者として世界のトップに君臨する「日本人らしい休日のあるべき姿」というものが求められていると言えるのではないでしょうか。
今現在、日本国内で必要とされている、「人口減少社会や人材不足を背景にした労働生産性向上」や、「世界と戦える独自性を生み出すイノベーション力」、更には「旧来型の組織的コンセンサスから、ICT社会に適応した自立・分散・協調をベースとしたラフコンセンサスアルゴリズムへの脱却」の為に私たちは何をすべきなのかという命題への解が、「日本人らしい休日のあるべき姿」とイコールになるのではないかと私は考えます。
先ず、労働生産性については、「労働生産性=付加価値/労働時間」という式が成り立ちます。つまりは、労働生産性を向上させるには、分母の労働時間を減少させるか、分子の付加価値を増加させる必要があります。分母を減少させるならば、労働時間を削減するのための施策が必要になり、具体的には、省人化や自動化などが行われています。他方で、分子を増加させるためには、付加価値を向上させ単価または売上を増加させることが必要になります。分母の労働時間を削減する取り組みは、会社組織が率先して行なっていることが多いと言えるでしょう。他方で、単価増や売上増に繋がる付加価値を高めるためには、会社組織レベルの取り組みだけではなく一個人レベルでの努力も必要になってきます。
次に、「世界と戦える独自性を生み出すイノベーション力」については、組織というものは理念やビジョンの意思統一が浸透すればするほど同質体化し強い組織となってくるものですが、それに相反してイノベーション力が失われていきます。イノベーション力を生み出すためには、同質体組織の中に敢えて異質体を投入し、同質体に変化や刺激を与える必要があります。この必要となる異質体は、同質体から距離があればあるほど適しています。具体的には、普段接することがないような業種の人や、自らとは異なる業務を行なっている人です。
最後の「旧来型の組織的コンセンサスから、ICT社会に適応した自立・分散・協調をベースとしたラフコンセンサスアルゴリズムへの脱却」については、換言するとこれまでの組織に必要とされていた「外枠を同じとする極めて組織に忠実で保守的な構成員」ではなく、「組織の理念やビジョンとなる中心軸を共有した上で、主体的に気付き、考え、実行できる外枠の異なる社員」へ脱却するということです。
上記の、付加価値の向上、異質体との接触、更には、ラフコンセンサスアルゴリズム型への脱却のために、休日に私たちは何をする必要があるのでしょうか?この休日に取るべき行動が「変革のシナリオ」となり、「あるべき姿」が構築され、これからの未来で勝ち残る「戦略」となるのではないかと私は考えます。
中山兮智是(なかやま・ともゆき) / nakayanさん
JDMRI 日本経営デザイン研究所CEO兼MBAデザイナー
1978年東京都生まれ。建築設計事務所にてデザインの基礎を学んだ後、05年からフリーランスデザイナーとして活動。大学には行かず16年大学院にてMBA取得。これまでに100社以上での実務経験を持つ。
お問合せ先 : nakayama@jdmri.jp