真夜中のイルミネーション 光の雪
真夜中に街のイルミネーションを見に来た。
年末恒例のイルミネーション。
もうすでに消燈間際の深夜。
いつもは流れている音楽も止んでいる。
他に人は歩いていないようだ。
夕方は音楽が流れイルミネーションを楽しむ人たちでいっぱいだった。
子供達も夢中で走り回っていた。
今はキラキラと煌めく光は眩いほどだが、なぜか気持ちはシンとする。
まるで人のいない遊園地のよう。
寒さもあって、光の波が雪のようだ。
キラキラと瞬きながら、落ちてくる青い光の雪。
街路樹のイルミネーションは冴え冴えとしたブルーなので、余計寒さが感じられる。
見慣れた街並みは暗闇に消え、静かに光の乱舞だけが見える。
私は今、光の渦の中に立っている。
いつもとは別の世界。
きらめく光の渦は奥へ奥へといざなっていく。
このまま光の中を歩いていけば、知らないところに行けそう。
寒さに手足が震えてきた。
暗い地面にも、照明の反射で淡い光が見える。
それがまるで光る霧のように揺らめいている。
冷たい空気を胸いっぱいに吸い込んで背伸びして見ると、空には三日月と小さな星の光がいくつも見えた。
いつもの夜空。
はかなくきらめくイルミネーションより、ずっと地味だがほっとした。
冬の夜空に白い月が静かに優雅に浮かんでいる。
絵 マシュー・カサイ「真夜中のイルミネーション」水彩
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