オープンカフェ
風の涼しい日に、道沿いのカフェに入った。
駅の近くで人通りが多い。
天気が良いのでテラス席に座り、風を楽しむ。
その風に乗ってタンポポの綿毛が目の前を通り過ぎた。
梅雨前のこの時期、一年でも最高に気持ち良い季節だと思う。
熱いコーヒーを頼んだが、シャツを揺らす風とちょうどいい相性だ。
ゆったりしたカフェだが、前の道はかなりの人が歩いている。
白いシャツが多い。学生の夏服。上着を抱えたシャツのサラリーマン。
話しながら歩く女学生たちも白いシャツだ。
5月の太陽のもと、シャツの群れが揺れる。
笑顔が多い。軽やかに歩く人が多い。
暑くもなく寒くもなく、吹く風は爽やか。
こんな日があってもいい。
いつ、地震が来るかもしれない。ミサイルが落ちてくるかもしれない。
ゲリラ豪雨や、台風の直撃が来るかもしれない。
自分や家族や友人がいつ病気や事故にあうかもしれない。
今までだって、私にはいつも不幸は突然来た。
幸せな時なんて決して普通じゃないんだ。
頭を振って悲観的な自分を振り払い、コーヒーの香りに逃げる。
ほろ苦く熱いコーヒーを飲み、椅子に深く腰掛ける。
喫茶店で読書もいいが、風の良い日はテラス席で外の人々を眺めるのもいい。
人の賑わいを見て、自分もその一人として活気を浴びる。
見上げれば青く、哀しいくらいきれいな空。
のんびり浮かぶ雲を見上げながら、この、今に感謝する。
絵 マシュー・カサイ「オープンカフェ」水彩・ペン
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