ある雨の日の午後
柔らかい雨が降っている。
今日一日、ずっと小雨だった。
傘を持ち、外へ。
夕方のような暗さに空を見上げると、分厚い雨雲の大海原。
けぶるような雨が弱い風に乗って吹き付けてきた。
顔から手足までふんわりと濡れた。
傘を差し、街路樹の街を歩く。
イチョウが黄色く色付き、灰色の空に美しい。
商店街は明かりをともし、すでに夜のような活気を見せている。
お店の明かり、焼き鳥屋の匂いと煙、駅から吐き出される人々。
色とりどりの傘が、歩く花のようで楽しい。
雨雲の間から少し晴れ間がのぞき始めている。
暗かった街に細い光が差し込む。
雨に濡れた道には、落ち葉が広がり、店からの明かりに輝く。
少し肌寒さを感じる秋の雨。
晴れ間は裂け目を広げ、光のカーテンを広げ始める。
一枚の古い絵のような景色。
何気ない、ある雨の日の午後。
絵 マシュー・カサイ「ある雨の日の午後」水彩・ペン
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