雪の降る街で
朝からずっと曇り空で、冷え込んでいた。
寒さで歯がカチカチとなるほどだ。
歩きながら、手をこすり合わせる。
視界にチラチラと白いものが現れた。
暗い空から雪が舞い落ちてきたのだ。
灰色のどんよりした街の景色に、白く儚い風花が舞う。
風が強まるとともに、雪も多くなり視界も白くなってきた。
空を見上げると、雪が風に乗り元気に踊ってるようだ。
楽しそうだね と呟いてみた。
目に雪が入って滲みる。口にも入るかな。
開けてみたが、わからない。寒さが余計増した。
雪の空を眺めるのは昔から好きだ。かなり長い時間でも飽きず眺めている。
どこかで子供の笑い声が聞こえたような気がした。
そういえば、数年前に何度か不思議な子に会った。
今日のように全身雪に覆われながら空を眺めているとき、だれもいなかったはずの公園で雪の中から小さな子供が駆けてきて突然膝に抱きついた。
キャッキャッとはしゃぎながらその子はじゃれては離れ、木の幹や滑り台の影に隠れてはこちらを覗いている。
黒目勝ちの目はニコニコと笑い、近づくとキャッと喚声を上げて逃げていく。
近くに親がいるかと見回してもこの雪の中、だれもいない。
走り回るその子の周りには、雪がクルクルと踊って見える。
雪ん子みたいな子だな。
しばらく鬼ごっこしてあげると、急にバイバイをして笑いながら雪の中に消えていった。
自分も子供の頃は雪が楽しく、走り回っていたから似たようなもんだろう。
今日もあの子が来るかもな。
白く幻想的な世界の中寒さで朦朧とした目に、笑い声を上げながら駆けていく子供の後ろ姿が見えた気がした。
絵 マシュー・カサイ「雪の降る街」 水彩・ペン
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