ちょっと走ってみる。公園のトラック。
近くの公園は、高校の陸上部員がよく練習に来ている。
いくつかの集団が汗びっしょりで荒い呼吸をしながら真剣な目で走っていく。
中には、かなり速い子もいて大勢を抜き去っていく。ランニングウエアもかっこいい。
速いなあ。いいなあ。見ているだけで気持ちいい。
自分はこのところ、何年も走ってないと気付いた。
この公園は、暗い朝早くから街灯のともる夜までお年寄りやサラリーマン、主婦、多くの人がジョギングしたり歩いたりしている。
ベンチで本を飛んだり芝生で寝転ぶ人もいる。
みんなおもいおもいに過ごせる場所だ。
ここなら、ちょっと走っても誰も見ないし気にも留めない。
不意に走りたくなった。
バッグを芝生に放り投げ、ちょうど走ってきた数人の後に続いて走り始めた。
間を空けているので、振り返られることもない。
他にも歩いたり走ったりする人は多いので目立たない。
ザッ ザッとスニーカーが地面を蹴る感触がいい。
手を規則正しく振る。
呼吸がハッ ハッ と大きくなる。
自分の心臓がドキンドキンと脈動している。
風を切って走るというのは、いい。
走るという行為は、一番単純で野性的な運動かもしれない。
公園を一周したら、息が上がった。もう無理。足が動かない。
ほんの2,3分しか走ってないはずなのに。
肌が汗ばみ、息は洗い。
でも、この清々しさは何だろう。血が全身を走っている。
やったね。走った。
久しぶりなので体はびっくりしているが、なんだか目覚めた感じだ。
目がさっきより大きくなった気がする。良く見える。
スズメたちの鳴く声が楽しそうに聞こえてきた。
こっちも笑顔になった。
ああ、水が,飲みたい。
絵 マシュー・カサイ「走る」 水彩・ペン
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