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寒空 光のカーテン

朝から寒いし、薄暗い。

窓から外を眺めると、灰色の分厚い雲が空全体を覆い轟々と風の音が低く響いている。

今日は雨でも降るのか。

暖かな部屋の中でこまごまと用事を済ませた後、外に出た。

思った通り、今日は寒い。

でも、やっぱり屋内より外のほうが気分がいい。
ぬくぬくの部屋の空気と違って外の大気はブルッと身震いするほど厳しい。
でも、清々しい空気だ。ぼんやりした脳が目覚めた気がする。

冬は曇り空が多い。

首をすくめ、猫背でポケットに手を突っ込んで歩く。自然、目線は地面に行く。道端の雑草はしなびて、街も灰色っぽくよそよそしい。

やはり人通りは少ない。こういう寂しい風景は落ち着くし、自分の思考の中に閉じこもるにはいい。

しばらく歩くうちに、周りの地面が明るくなったり暗くなったり変化し始めた。

見上げると、分厚かった雲のあちこちから光が差し込み、街や山を照らしていた。

雄大な眺め。

光のレースのカーテン。

強い風と共に雲の流れも速く、光のカーテンもゆっくりと浪打ち動いてゆく。
相変わらず風の音が響いている。

突然、自分の周りが明るくなり光が差し込んできた。
暖かい。
さえない色ばかりだった周りの景色だが、急に光とともに色彩が浮かび上がった。

気付かなかったが、あちこちに山茶花の赤い花やまだ残っている木々の紅葉の色が見えた。目の前の木の枝には、雀が3羽着ぶくれしたように膨らんで首を動かしている。

見上げると光の柱の中で時折、きらきらと小さく輝くものがある。

初雪だろうか。自分の息が白く見える。

明るい光の中でその輝きは何かを祝福しているようだった。

今日、ひとついいことあったな。


絵 マシュー・カサイ「光のカーテン」 水彩・ペン


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