体の痛み心の傷③
私の前に座ったその男性がすくっと立ち上がり
私に体を向けた。
思わず身構えた。
足がガタガタと震える
相手に気付かれてはダメ。と必死に膝を押さえた
あの。座席倒しても良いですか?
え。あっ。はい。
たったそれだけだ
それだけなのに、体が無意識に反応した事に
驚いた。
えっ?さっきまで平気だったのに、、、
大丈夫。大丈夫。と体をさする
自分の体がこの様に反応するとは思っても見なかった。怖いとか不安とか警察署にいた時には全く感じなかったからだ。
家に着いたのは22時を回っていた
ホッとした。
朝になり
仕事に向かう。1日も早く普段通りの生活を送りたい。
目の充血は治っている。青アザにもなっていない。視力も問題ない。大丈夫!!
いつも通りの1日が終わり車に乗り込んだ
右目に違和感を感じ始める
黒いススが見え始め、虫が飛んでるかの様に黒い斑点も見える
左目を瞑ると、視界がもやっとしている
あら。これはまずいな。
なんとか帰れるだろうか?
いつも以上に慎重に運転を心がけ
家に着いた
眼科に行かなきゃだな。
そんな事を思いながらテレビに目をやると
〇〇駅前で女性が何者かによって刺されて死亡のニュースが飛び込んで来た。
まさに飛び込んで来たのだ。私の脳内へ
その途端
全身に寒気が襲った。
呼吸が速くなる。
犯人があの時刃物を持っていたならば
私も刺されていたんだな。と思い始めたら止まらない
すぐにTVを消した。怖い。なんだかわからないけど怖くて仕方ない。
大丈夫。ここは安心できる我が家だからと言い聞かせる。
眠れぬ一夜が明け
眼科を受診した。
視力検査から始まり眼球の写真を撮るのだが
強い光が当てられ検査がこれがまた辛い。
出血してますね。
自然に治る事もあるので
1週間様子見ましょう。と言う事になった
仕事は休んだ方が良い。との事
大した怪我もなく。と思っていたがどうやら雲行きが怪しくなって来た、だけども私は自然に治ると疑わなかった
再受診の日
前回と同じ検査を受ける
頭を動かしてはならぬとの事で看護師に頭を押さえつけられるのだが
動悸が激しくなり、呼吸が速くなってしまう
医師は深刻な顔つきで
これは一刻も早くレーザー手術を受けましょう
穴が大きくなってきてるので自然には治りません
この状態では網膜剥離になるのですぐにやった方が良いです。けど
あなたの状態を見るとここで受けるのは厳しいと思うんです。
もちろんここでもレーザー手術は出来るんだけど
この怪我の経緯を見ると
パニックになった時、ここでは対処出来ないので
紹介状を持って大学病院受診して下さい。と申されるではないか。
網膜剥離🟰失明の認識だったので
これはヤバい。
何としても失明は免れたい。紹介状を握りしめ大学病院へ向かう。
有難い事に女医さんだった。
受診したその日にレーザー手術を受ける事になる
ただこれで完璧とは行かないとの事
空いた穴が裂ける事もある
そうなると網膜剥離の手術になります。と説明をされる。
大丈夫。このまま治るはず。と疑わない、と言うか思いたかった。
レーザーを受けてから数日経ったある日
さらに右目が見え辛くなった。
焦った。まさかの????
緊急で診察してもらうが
再出血しているのが原因なんだが
今の段階では
直ぐに手術と言う程でも無いけれど
考えておいた方が良いですね。なのだそう
なんとしても手術だけは回避したいけれど
網膜剥離に進行してしまっては手術以外治る方法はないのだ。
そこからなんとも言えない日々を過ごす。
なんでこんな思いをしなきゃならないのだ。
全世界を恨み倒したくなる気持ち
あの時、被害届を出すべき!!と言ってくれて本当に出して置いて良かったと有難い気持ちになったりもする
犯人への思いは
憎むとか恨むとか許せないとかの次元を超えている。思いや言葉が見つからない
何かの時は直ぐに対応できる様にと一週間に一度の診察になった。
自分の感覚では目の具合が良くなってる感覚
モヤっとしたのが晴れて来たそんな診察の日
大丈夫。手術は避けられるはず。そんな心持ちになっていた。
残念なんですけど
網膜剥離が始まってしまってます
直ぐに手術しましょう。と担当の女医氏
えっ?
うそでしょ?
絶句した。これが絶句なんだな。
言葉が出て来ない代わりに
目から涙がダバダバと止まらない。
説明が全く入って来ない
手術する為に検査をする事になった
全身麻酔で受けるからだ。
日程が整った
気持ちの納めどころが分からない
大丈夫!!
頑張って!!
きっと良くなる!!
そんな言葉が全く響かない。
明日手術する
うつ伏せ状態で3日間過ごす事になるんだそうだ
逃げ出したい気持ちを抑える為に
今、この文章を書いてる。
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