『どうしよう魔王』が襲ってきたら、腹をくくって始めてみよう
誰にでも、「これからどうしよう?」と迷うことがあるのではないでしょうか。そんなとき、「他の人はどうしているのかな?」と思いませんか?【L100】自分たちラボでは、「身近にいる普通の働く女性たち」のキャリアや人生についてのインタビューからヒントを探してみることにしました。
今回のお話は、「どうしようと迷ったら、まずやってみる。始めてみたら面白いことが見つかるかも」と言う栗原さん(仮名)のお話です。
#ライフデザイン #インタビュー #働く女性 #夫の転勤 #海外留学 #コンサルティング #社会人大学院
気に入っていた自分の仕事を、夫の留学について行くため辞めざるを得なかったことや、会社の先輩に誘われるがまま教鞭を執ったことなど、ご自身の人生を「流されている人生」と語られた栗原さん。ですが、今回のインタビューで、単に流されてきただけではなく、その中に自分だけではたどり着けない「楽しみ」を見つけてきたことに気づかれたようです。流れの中で、どんな心持ちで日々を充実させてきたのか、そして、今後について思うこととは?
―――今回、ライフヒストリーや人生曲線を書いてみていかがでしたか?
20代の人生曲線は、今から振り返ると結構なだらかだけれど、その当時はアップダウンを感じていたと思うので、このような(ギザギザ線を重ねた)表現にしました。30代前半で、すっと落ちて線が途切れているのは、主人がアメリカに行くことになって仕事を辞めたところ。自分が仕事の続きを諦めなければいけないという気分が、一番下がった線です。だけど行ってみたら楽しかったので、次の線は高いところから始まっているんです。40代後半から50代の中頃までは大学で教えていて、月~金曜は会社、土曜はフルタイムで大学。精一杯やったという意味では充実していました。50代後半で落ちているのは、大学を辞めて気が抜けてるという感じです。
全体では「流されている人生」だと思いますね。
働くことへの期待値は低かったが、やり始めたらおもしろかった
20代:アルバイト先にそのまま就職→転職
―――「流されている人生」ということですが。
最初の就職のとき、あまり考えずに大学時代にアルバイトをしていた小さな会社にそのまま入りました。雇用機会均等法より前の世代で、女子が大きな会社に入ることは難しかったし、大学では「労働を搾取する資本主義はけしからん」みたいな人たちが周りにいたので、働くことへの期待値はすごく低かったんですよ。
入った会社は消費者調査なんかをする仕事で、やり始めたらすごく楽しかった。ただそこは、社長のために働く会社だったので、ここでは限界があるなと思い、似たようなことをする他の会社を探しました。今では当時の社長が感じていたであろう経営責任がわかるような気がします。
転職した2社目の調査・コンサルティング会社は、自分で意思を持って選んだ会社だし、仕事を任せてもらえるし、楽しかったです。そこに6-7年いたと思います。無茶ぶりも多かったですが、社員を成長させてくれる会社でもありました。だから、(主人の留学に同行するために)そこを辞めることにはすごく抵抗がありました。
どうしようと迷ったときは腹をくくってやるしかない。でも結局楽しかった
30代:夫について渡米
―――その後ご主人の留学についていくことになったのですね?
仕事が楽しかったので、辞めるのは忸怩たる思いがありましたが、自分が諦めなければならないとは思っていました。ただ、すぐには決められなかったですね。夫も私が悩んでいるのは知っていましたが、相談はしていないです。
―――迷った末に、どのように決断されたのですか?
どうしよう、どうしようと、「どうしよう魔王」が襲ってきたときは、諦めて腹をくくってやるしかないと思います。仕事でレポートを書いていても、どうしよう?となることがあるけれど、諦めて腹をくくってやるしかないと思ってデータを見始めると、落ち着いてくるという経験はしていました。毎回どうしよう?と思うのですが、やってみるとヒントがみつかります。どうしようと思っている時間はもったいないなと思うってことかな。
―――(アメリカに)行ってみたら楽しかったというのは?
計画もしていなかったのですが、主婦だけではつまらないと思って、アメリカに行ってから、何かやろうと資料を集めまくって学校に行ったんです。主婦オンリーの生活も、地元のことを調べるのも、新しい生活環境も楽しかった。パソコンも最先端を買いましたしね。
―――学校はどのように選んだのですか?
大学のエクステンション・スクール(一般社会人向けの公開講座)はすごくオープンでした。MBAの1年生が習うような科目を選んで勉強し、レポートを出してパスすれば修了証がもらえるというコースに行きました。英語のハードルは高かったけれど、授業は面白かったです。英語は現地に行ってから始めて、TOEICもすごくがんばりました。苦労はしましたけど、新鮮で楽しかったですよ。
日本に戻ったら絶対にまた仕事しようと思っていたので、戻る前に就職口を探しました。前の会社でやっていたのと似たような仕事があるよと紹介してもらって入ったのが今の会社です。
大学で教える機会を得られたことに感謝
40~50代:本業の傍ら教鞭を執る
―――大学で教えることになったきっかけは?
ちょうど社会人大学院立ち上げのときで、マーケティングを教える人をさがしていて、先に採用されていた職場の先輩の紹介で入りました。先生の経験はなかったですが、仕事でセミナーやワークショップはやっていたので。社会人大学院生は意識が高く、アラを探すよりは得られるものを得ようという姿勢だったので助けられました。皆さん優秀で、1投げると水の輪が広がるような反応があって、この仕事のチャンスがあったことに感謝しています。とはいえ、普通に会社での仕事もしていて、その上で授業の準備やレポートの採点もしていたので、この時期は本当にパンパンな人生でしたね。それでもこの方と一緒なら、仕事をしたいとか貢献したいと思える方々が近くにいらしたので、続けられました。
大学で教えるのを辞めて、でも仕事だけの生活ではいかん、と思って趣味的な生活を増やそうとしました。それでゴルフを復活させました。教えるのが長かったので、教えてもらうのはすごく新鮮で、先生は生徒の何を見て、どう工夫して伝えようとしているのかなどなど考えるのも楽しいです。マンションの理事も、理事長までやりました。
100歳まで長いなと考えて、初めて戦略的に考えなければと思った
今後について
―――これから先についてはどう考えていますか?
地域の関わりの中で、子ども食堂の活動をしている人たちがいるので、そういうことをやれたらいいなと思ったりします。大学のゼミ生グループとまだつながっていてディスカッションをすることがあるので、そういう活動も続けたいと思っています。
今の会社では定年はないのですが、90歳で働いているとは思えない。働くのを辞めるときに自分の気力を何に振り向けるか考えると思うのですが、答えはまだないです。叔母は90代半ばで、100歳も見えています。自分は60代だけれど、100歳まではずいぶん長いな、と思って、初めて戦略的に考えなければと思っています。主人はあと少しで定年。となると自由度が高まるでしょうから、私も時間を自由に使えるような人生設計をするかもしれないなと思っています。
―――思い描いていた人生と比べてどうですか?どんな大人になりたいと思っていましたか?
10代の頃は親から離れて、自分で決めていくということに憧れていました。既定路線に対する反発はありましたね。仕事については最初の2社は、長時間労働でしたが、強制されている感はなくて、どんどん新しい面白い仕事をさせてもらえるからやっていました。でも、何か失敗したら「だから女は」と言われまいと肩ひじ張っていましたね。うまくいけば個人が評価されるけれど、失敗すると「だから女は」となる評価体系だと自分では思い込んでいました。1社目も2社目も大企業ではないですが、小さなところの方が、女性の入る隙があるなと思っていました。
―――そういう点では戦略的に会社を選ばれているように思えますが、「流されている人生」なのですか?
スタートがそもそも流されているので、そう思うのかな。目的もなく就職していますから。自分は、始めるとああ楽しいと思うたちだったんだなと振り返ってみるとそう思います。やり始めるとこういうのもあるんだなあと広がる感じで。大学の先生になったのも流されてですし。
やってみると面白いということはある。でもプライベートを大切にすることも大事
女性たちへのメッセージ
―――今、迷っている女性たちに何かアドバイスやメッセージがありますか?
食わず嫌いにならないこと。やってみると、その中で面白いことをみつけられることもあるので、やってみる前からレッテルを貼るのはもったいないと思います。やってみてだめだったら、辞めればいいじゃん、って感じかな。苦労していても誰かが助けてくれる。そういう人には頼ればいい。斜め上の上司が助けてくれることが多いですね。
父が倒れた頃、私は、海外出張の仕事が多くて何度もアメリカに行っていたんです。でも父の状態がまずくなって、次の出張は行けないかもしれないとアメリカのボスに謝ったら、「何を言っているんだ、プライベートより重要な仕事はないよ」と言ってくれて、それは印象深い言葉でした。そういうことにも気づかせてもらえる、人間関係には恵まれていたんですよね。
―――今日、インタビューに参加してみていかがでしたか?
始めてみると「あぁ楽しい」と思うたちだなと、今回、人生曲線を書いてみて気づきました。
(*文中の写真はイメージです)
インタビュアーコメント
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