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ラズベリーな悲喜こもごも (ショート)


             (約1100文字)

一日中雪が降る、雪は嫌いじゃない。
買い物帰りに立ち寄った店で買ったラズベリーワッフルアイスを眺めてる。
寒いのにあまりにもラズベリー色が綺麗だったから。

雪が降るとまろやかでまどろみの世界ができあがる。


まどろみの世界でワッフルアイスを口にする。旬でみずみずしいラズベリーも好きだが…
アイスとまろやかになったラズベリーも美味しいね。

一人暮らし 休みの日は好きなスィーツをひとつだけ食べることが楽しみ。
しんしんと雪が降る中思いを巡らす。
音楽も何もつけず、ただ雪が降り積もる中静かに過ごす。



雪とワッフルアイスで甘美な世界
昔の思い出に浸る。

急に「ドサッ」と屋根から雪が落ちる音がして
現実に戻る。
雪が止めば明日は凍結してそのまま水気を帯びた融雪。

幻想と現実は交差しながらやってきて
その度に織りなす風情に、心は悲喜こもごも。


幻想から覚めるとそのギャップに急にせかせかとなる。
「列車は動くのだろうか?」
「換えの靴下とタオルを入れて」
急に現実思考になった。
でも今の会社は居心地が良い。お給料はそこそこだが食べていけたらそれでいい。



ワッフルアイスを一口 甘美

甘美な世界で思考が散漫になっていく。

あの頃は異様だった。
結局好きになった男性はただの遊びと言う事がわかり「家庭に迷惑をかけた」の理由で男性の伝手で内定していた就職先もダメになった。


その前に付き合ってた女性からは、大学でも無視されたがそれ以上は何も言って来なかった。
実業家の父親の跡を継ぐ力量があったのだろう。



今お付き合い願ってくれる人もいなくはないが
一人が良い気楽だ。自由がいい、決めたくはない

溶けかかったワッフルアイスをもう一口 甘美


雪はそろそろ止みそうで甘美な世界から
埋もれていたはずの現実世界にそろそろ戻らなければ。

雪は溶けた


あれから紅色の服は何となく似合わない。
ラズベリー色の方が落ち着く。
紅色に紫色を混ぜただけの…割合は?
    「クエスチョニング」
白い椿は2通りある。
椿は冬、ナツツバキ(ツバキ科)は夏に咲く。
科は同じでも種類は多少違う…

自分が好きな方でいい…


ナミはラズベリーワッフルの最後をほおばりながら静かで自由な今と紅色の頃の悲喜こもごもを味わう。


今は決めたくないから…


心の自由を求めすぎる事をあまり周りは認めてくれない。
だったら心が決めるまでひとりで…。


雪が溶けたらまた白い椿を見に行ってみよう。
ラズベリー色のロングカーディガンを羽織って
ラズベリーアイスの様に心奪う景色と化そう。



 ナミは以前にも増して申し分なく美しい。


             フィクションです


          完


📎クエスチョニング(LGBTQのQにあたる方)
 自分の性的志向が定まっていない人
 敢えて決めていない人
 まだ決めかねてる人

Qの定義はとても幅広く説明長文になるため
今回クエスチョニングの定義で展開しています。





# 青ブラ文学部 I山根あきらさん企画
「紅一点の魔物」自分が書きましたストーリーの続きが読みたくて書いてみました。


最後までお読みくださりありがとうございます。



                 サブリナ