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何もできないから、手を動かすしかない

仕事って、おそらくどんな分野、業種、業態でも、簡単じゃないはず。
自分に求められるもの。自分自身が自分に求めたいもの。
バランスも必要。
そのバランスを保つって、本当にむずかしい。
対人援助、福祉の仕事をしていると、制度や社会の影響も大きい。

その中で、バランスを保つことの一つに、
編み物をしている。

編み物はじめたとき

もう10年以上も前のこと。
職場でベテランの人たちが、編み物をし始めた。
一人がすると、かつてやっていたという人も、なんとなくやっていて。
面白そうだなっと思ったことは、間違いない。
家庭科の授業以来、やってみることにした。

仕事がすごく忙しくて、ただ、成果の見えることがしたかった。
編み針だけは豊富にあった。
母が編み物をする人だったから。
賞状をいれる筒に、編み針が何本も入れてあって、
道具は買わずとも揃っていた。
スタートするのに、材料を揃えるのみだった。

肩こりや夜ふかしになることもあるけれど
10年以上、細々と続いている。

どんな時に編むのか

自分のものを作っているときもあれば、
誰かにお渡しするために、作っているときもある。

自分のものを作っている時は、可愛いものを見たとき。

誰かに渡すときの、わたしの思いは、わりとシンプルだ。

心配しているとか、気にかけている。

例えば、がん治療をしていた職場の人に。
大変なことに巻き込まれていた先輩に。

面と向かって言えないことを、言いにくいこと、
聞きにくいことを編み物に託していることが多い。

なぜ、託すのか

編み物にしなくても、
言葉で伝えることもできるはず。

でも、自信がない。
そもそも、自分が、無力で非力であるということを、自分がわかっているから。
どんな言葉をかけても、相手に届くかわからない。

もっというと、声をかけていいタイミングと、そうでないタイミングもある。
相手との関係があればあるほど、こちらは気にかけるし、心配だ。
必ずしも、声をかけること、何かすることがいいとは限らない。

ただそばにいることしかできない。
福祉の仕事をしていると、そんなことの方が多いことがわかっている。

誰かを思うとき

福祉の仕事って、外から見ると、介護に代表されるように
人を助ける仕事だと思われている。
確かに、その側面はあるが、それは一部にしか過ぎない。

誰かを思って、何かができる。手助けをする。
それが多くない仕事だと思っている。

むしろそこに辿り着くまでに、共に悩み、考える時間の方がはるかに多い。
そして、多くはそんなに簡単に解決はしない。

共に悩み、考える。
それは、傍にいて、何かをするでなく、傍にい続けることだと思っている。
そのことを伝える一つの方法として、編み物をしている時がある。


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