
フルーツ大好き!それは入院中に習慣になった
「日々の大切な習慣」というお題を見つけた。
私の夜のルーティーンはいつか詳しく書きたいと思っているのだが、そのルーティーンの中に
「フルーツを食べる」
というのがある。
ほぼ毎晩のように食べている。大抵はりんごやバナナといった常備しているフルーツに冷凍のフルーツミックスを加えて、ヨーグルトで和えて食べている。
私が毎晩フルーツを食べるようになったのは、実はかの悪名高い「ドイツの病院食」にあるのだ。
病院食は濃い味
日本だと病院食というのは「味が薄い」と思われていないだろうか?
塩分の摂りすぎは体によくない。病院食は病人が食べるのだ、健康な体に良い食事を提供するべきだろう。
そのはずだが、ソーセージとビール以外には上手いものがないという国、ドイツの病院食は違う。
少なくとも大勢の日本人にとっては違うはずだ。
そうなのだ、病院食の味は濃いのだ。
おまけに質素だ。特に夕食。
ドイツの諺にこんなのがある
"Morgens wie ein Kaiser, mittags wie ein König, abends wie ein Bettelmann".(朝食は皇帝のように、昼食は王様のように、夕食は乞食のように)
誰が今更このように食べるのだ?私は夕食に美味しいものをたっぷり食べたい!
ところがドイツの夕食と来たら、あの悪名高い(と私は思っている)カルテスエッセンだ。パンとハムとチーズだ。しかも、パンというのは酸味のあるライ麦パンで、ハムとチーズは塩味たっぷりだ。
これに北国の宿命、保存食のピクルスだ。
塩味の濃いオープンサンドとめちゃくちゃ酸っぱい野菜。これが体に良いとはどうしても思えない。(ライ麦パンは白い小麦粉のパンより体に良いだろうが)
10日間の入院生活
自宅で自分の好きなものを食べれる間は良い。
周りのドイツ人がどんなに私の苦手なものを食べていようが、そんなことは知ったことではない。私は私が好きなものを食べればいいからだ。
だが、入院中はそうもいかない。
約30年前におよそ2ヶ月という期間の入院生活を送った私は、ドイツの病院の夕食の貧しさに呆れ返り、
もう二度と入院なんかしない!
と固く決心したのだ。健康保険会社はさぞかし大喜びであっただろう。
だが、その決意は今から2年前に覆されてしまった。
私は不覚にも怪我をしてしまった。すぐに入院となった。10日間も入院生活を送る羽目になった。
「ああ、これでしばらくは人生の楽しみの一つ、食事が消えるのか。夕方は乞食のような食事で我慢するのか」
夕食の時間がやってきた。食事係の人がやってきた。
「何を召し上がりたいですか?」
「何があるんですか?」
するとその係の女性はすらすらと色々な食べ物の名前を言い始めた。パンに始まり、ハムの種類、チーズの色々、そしてヨーグルトやフルーツサラダ。
どうやらこの病院の夕食はアラカルトで、その日、その時に好きなものを選べるらしい。
パサパサのパンは欲しくない。塩辛いハムも欲しくない。
そんな私の耳に光り輝くように聞こえた言葉は「フルーツサラダ」だ。
フルーツなら間違いあるまい。どの国でもバナナはバナナの味だ。りんごはりんごの味だ。塩辛く味付けすることもない。
私はクロワッサンやヨーグルトにフルーツサラダを添えてもらった。
そういえば、30年前の2ヶ月にわたる入院の時には毎日のように桃の缶詰がでてきてうんざりしたなあ、と思いながら(その頃は夕食を選ぶことができなかった)。
係の女性が私のベッドテーブルまで食事を運んでくれた。トレイにのっているフルーツサラダは実に様々なカットされたフルーツが所狭し、と容器にいれられていて、見た目にも綺麗だったし、本当に美味しかった。

10日間の入院中、私は毎晩フルーツサラダを食べた。いや、夕方だけではない、朝食にもフルーツサラダを添えてもらった。
入院中、動くことができなかった私は夕食を楽しみにするようになった。「悪名高いドイツの病院食」と言って申し訳なかった。美味しかった。
帰宅してからも夕食の後にはフルーツサラダを食べたくなった。とはいえ、様々な新鮮なフルーツを買ってくるわけにもいかない。常備しているりんごとバナナ以外は、冷凍のフルーツミックスを頼って、フルーツサラダを作るようになった。
これを音楽を聴きながら食べるのが毎日の夜のルーティーンの一つになったのだ。
夜にお酒を飲まなくなった私の楽しみとなった。
2ヶ月前、2年前と同じ病院に3日間ほど入院した。
今回は入院前から夕食を楽しみにしていた。日帰りでも良い、と言われた手術を「(病院食を食べたいから)入院します!」と言ったほどだ。
もちろん、医者は私のそんな事情など知らない。