Barbara の Mon enfance(子供の頃)
シャンソンの場合は、歌詞を読んだだけではその歌の真意が理解できないことが稀にある。本来は歌詞が全てを言い表すものなのだが、数奇な人生を歩んだ人が自分の過去を打ち明けるような歌詞を書く時は、行間にいろんな意味が込められていて、評伝と一緒に読んだ方が理解度が深まる。
そこで、今回は、Barbara(バルバラ)の Mon enfance(子供の頃)を Marie Chaix が書いた評伝 "Barbara" とともに読み解こうと思う。
車を止めて、或る街に降り立った
この歌は、いきなり " J'ai eu tort," (わたしは間違っていた)で始まる。
J'ai eu tort, je suis revenue dans cette ville loin perdue où j'avais passé mon enfance
J'ai eu tort, j'ai voulu revoir, le coteau où glissaient le soir bleus et gris ombres de silence
Et je retrouvais comme avant, longtemps après
Le côteau, l'arbre se dressant, comme au passé
わたしは間違っていた、子供の頃に過ごした遠く忘れ去ったこの街にやって来た
わたしは間違っていた、静寂の青とグレーの影が滑る丘の斜面をもう一度見たかった
そして、何年も経っているのに昔のままだった
丘の斜面と樹は昔のままの佇まいだった
評伝によれば、1968年の冬の初め、バルバラは国内ツアーをしていた。シルバーメタリックのメルセデス(自家用車)でアシスタントとともに Saint-Marcellin という街を通りかかった時、標識に気付いたバルバラがこの街に寄ってと運転手に指示した。子供の頃に過ごした家を見てみたいと言うのだ。
3人揃ってその家に行ってみると、冬なので花は咲いていなかったが、風景は昔のままだった。
それで、なぜ「わたしは間違っていた」のか? その理由は、後述する。
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